離婚問題による子どもの連れ去りが深刻化している件について解説

親権者指定で起こる問題

「私が子どもを育てる」「いや、俺が育てる」そんなやりとりが、離婚する夫婦の間で繰り広げられています。子どもが可愛いのは、父親も母親も同じ。現状では精神障害などの特別な理由がなければ、母親が引き取るのが一般的ですが…。親権をめぐる争いは、まさに深刻化しています。

親権争いから子どもの連れ去り事件が増えている!

子どもの連れ去り事件が、いま深刻な社会問題となっています。親権争いの最中に不利な側が突然子どもを連れ去ってしまうケースや、国際離婚をした相手が子どもを本国に連れ去ってしまうケース、離婚後に子どもと面接できない親が子どもを連れ去るケースなど、その理由はさまざまです。ここでは、そのほんの一部の事例をご紹介しましょう。

保育園のお迎えに元夫が現れ、子どもを連れ去られてしまったAさんの事例

Aさんは新卒入社をした会社で夫と出会い、結婚をしました。結婚後は夫の実家に住むことになり、そこで子どもを出産。3歳になるまで夫の両親が住む家で子育てをしていたAさんですが、徐々に姑との折り合いが悪くなってしまいました。

「両親と別居したい」と申し出たところ、夫からは「それはできない」という、冷たい返事が返ってきました。思い悩んだ末、Aさんは離婚を決意。離婚にあたっては親権をめぐって夫と争うことになり、調停の末にAさんが親権を持つことになりました。

ところがある日、Aさんがいつものように子どもの保育園にお迎えに行くと、「あら、今日はお父様がお迎えに来られましたよ」と保母さんに言われ、Aさんはビックリ!なんと元夫は、Aさんに内緒で子どものお迎えに行き、自分と両親の住む家に子どもを連れ去ってしまったのです。

子どもと歩いているときに、後ろから突然子どもを奪われたBさんの事例

Bさんの夫は、結婚して子どもが生まれた頃から、Bさんに殴る蹴るの暴行を加えるようになりました。Bさんは顔にアザを作ったことが何度もあり、外出して帰ったときは家から閉め出されたこともありました。

悩んだ挙句、Bさんは離婚を申し出ましたが、夫は迷うことなく却下。仕方なく子どもを連れて実家に帰ったBさんは、夫からの「子どもと会いたい」という連絡にも、怖くて応じることができずにいました。

するとある日、Bさんと子どもが街を歩いていると、突然後ろから夫がやってきて子どもを奪い取って逃げてしまったのです。Bさんは慌てて相談していた弁護士に連絡し、弁護士から警察への通報によって夫を捕らえることができ、子どもは無事Bさんの元に返されました。

現在、Bさんは離婚に向けて調停中ですが、心配なのは「たとえ離婚ができても、また夫に子どもを連れ去られてしまうのではないか?」ということです。夫は面接交渉権を要求していますが、もしも夫が子どもと会う機会を持つと、直情的な夫がその場で子どもを連れ去ってしまう可能性は大いにあります。

「子どもと会いたい」という夫の気持ちはわかるものの、今後どうすべきかを思い悩むBさんでした。

そもそも親権者とは、いったい何?

子どもを育て、財産を管理する“権利”と“義務”を持つ人のこと

離婚をすると、親権を持っている親の方が子どもを育てることになります。離婚の話し合いのときには当たり前のように使う「親権者」という言葉ですが、「一緒に住む権利を持つ人」という以外、あまり意味が分かっていない人も少なくありません。

親権者とは、硬い言葉で言うと「未成年者の子供を保護・養育し、子供の財産を管理する親の権利・義務を有する人」。つまり、子どもを育てて財産管理をする権利もあれば、義務もある人のことを指します。

この親権は、結婚している間は夫婦二人が持っているのですが、離婚することによってどちらか一方のものになります。ただし、子どもがすでに20歳以上の場合は、親権者は必要ありません。

親権は親のためでなく、子どもためにある

よく勘違いしてしまいがちなのは、親権がまるで親のためにあると思い込んでしまう人が多いことです。離婚裁判などで「親権を勝ち取る」というような言葉が使われるので、そう思うのも無理はないかもしれません。

しかし、親権とはそもそも、子どもの立場を守るために設けられたものです。そして、親権をめぐる裁判などで裁判官が第一に考えるのは、「どちらがより子どもを幸せにすることができるか?」です。

よく父親の側が「母親には経済力がない。自分が子どもを育てた方が、子どもを幸せにできる」と主張する場合がありますが、裁判所の判断の仕方はそれとは違います。子どもが成長するうえで、どちらが親権者として適格であるかを考えた場合、経済力は親権を決定する際のファクターのひとつに過ぎません。父親は母親に養育費を払う義務がありますし、万が一養育費を払わないようであれば、父親は親権者として不適格と判断されます。

親権は「身上監護権」と「財産管理権」に分かれている

ひと言で親権者といっても、実は親権の内容は二つに分かれています。それは、「身上監護権」と、「財産管理権」です。

身上監護権 ・子どもの身の回りの世話をする
・子どものしつけをする
・子どもに教育を受けさせる
・子どもの居所を指定する
・子どもの職業を許可する など
財産管理権 ・子どもの財産を法的に管理する
・子どもに代わって法律行為を行う など

原則的には親権者はこの二つの権利を両方とも持っているのですが、たとえば「親権は父親が持っているが、海外出張になって子どもの世話ができない」「親権者をどちらにするか、どうしても折り合いがつかない」などの理由がある場合は、例外的に父親を親権者・母親を監護権者(またはその逆)にするなどの方法がとられます。

子どもは母親が育てる方が幸せは本当?

「子どもが大きくなるまでは、母親のスキンシップが必要」という考え方

日本の現状としては、精神障害などの特別な理由がなければ、母親が子どもの親権を取るのが一般的です。特に子どもが10歳未満の場合は、母親とのスキンシップが大切だと考えられています。「子どもが大きくなるまでは、母親のもとで暮らした方が幸せだ」という考えが根付いている日本社会で、父親が子どもを引き取るというのは、非常に難しい現実があるでしょう。

状況によっては、父親が引き取るケースもある

しかし、離婚後に父親が子どもを引き取るケースが、まったくないわけではありません。裁判所が親権者を決定するにあたっては、主に以下のような観点を考慮します。

  1. 子どもがどんな場所に住むことになるか?
  2. 親はどのようにして収入を得るか?
  3. 子どもは転校などの生活環境の変化を余儀なくされるか?
  4. 子どもはどちらと住むことを望んでいるか?
  5. 離婚の原因がどちらにあるか?
  6. 親に精神疾患など、子どもを養育できない理由があるか?

こうしたさまざまな観点から、裁判所はどちらか一方の親を親権者に適切と判断します。ですから、たとえば母親が不倫をしたことが原因で離婚に至った場合、それで親権者と認めないということはありませんが、有効な判断材料とはなるでしょう。

母親がうつ病などの精神疾患を患っている場合や、金遣いが荒くギャンブルに依存している場合、夜間に出歩いて子どもの入浴や食事などの面倒が見られない場合なども、親権者として認め難い要因のひとつになります。

子どもの連れ去られたときは、調停・審判の申立てを!

連れ去られた子どもを取り戻すには、かなりのエネルギーが必要です

万が一、親権者が離婚相手に子どもを連れ去られてしまった場合は、自力で取り戻すのが非常に難しいケースも少なくありません。その際は、速やかに家庭裁判所に調停(または審判)の申立てをしましょう。

「どうしてもすぐに引き渡してほしい」という場合は、仮処分として審判前の保全処分を申し立てる方法もあります。事が事だけに、自分一人で立ち向かうよりは、弁護士などに相談して解決を図る方が賢明です。当サイトから離婚問題に強い弁護士を探して、何はともあれ事情を話してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

連れ去られた子どもを取り戻すには、かなりのエネルギーが必要です。連れ去られたままにしておくと、時間が経てば経つほど解決が難しくなるため、すぐにでも行動を起こすことが大切です。

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