離婚届のオンライン手続きが可能に!結婚・離婚のオンライン化で予想される懸念と対処法の現状

電子化する離婚届

婚姻届・離婚届オンライン化へ

婚姻・離婚の届け出がハンコ不要・オンライン手続き可能に

2020年10月9日、婚姻届・離婚届の押印廃止を検討していることを上川法相が記者会見で発表し、注目を集めています。
婚姻届・離婚届の押印廃止を検討 法相(NHK)

婚姻届・離婚届は“認印でも可”とされていることから、法務省によって押印は廃止可能と判断されました。一方で、不動産登記など実印が必要な手続きについては、今後も引き続き押印欄を設けると説明しています。

菅首相は行政手続き全体の効率化・デジタル化を急ピッチで進めていますが、その一つが“脱ハンコ”の取り組みです。
10月1日には河野行政・規制改革相も、各省庁での押印手続きについて9割以上廃止すると発表していました。
婚姻届・離婚届以外にも、今後は様々な行政手続きのオンライン化が進められる見通しです。

しかしネット上では、

  • 他にもっと優先的にオンライン化すべき書類があるはず
  • オンライン強制離婚始まるな
  • 離婚率上がりそう
  • 知らない内に勝手に出される被害が多くなりそう

など批判の声も多数上がっています。
中には、具体的な海外の事例をふまえ「デジタル化先進国エストニアですら婚姻届・離婚届はオンライン手続きから除外しているのに、日本の取り組みはズレている」と指摘する声も見られます。

婚姻届・離婚届のオンライン化へのよくある懸念

 

勝手に婚姻届・離婚届が出された場合、どうなるのか

ストーカーと結婚

婚姻届・離婚届のオンライン化についてよくある懸念としては、片方が結婚・離婚を承諾していないのに、勝手に提出されてしまうケースが挙げられます。

具体的には、

  • ストーカーや結婚詐欺師に勝手に結婚届を出される
  • 離婚を拒否しているのに勝手に離婚届を出される など

の状況が考えられます。

勢いで離婚する人が増えるのでは?

衝動的な離婚のイメージ

手続きが大幅に簡略化されたことで、今までよりも衝動的・感情的な離婚が増えるのではないかという懸念もあります。

これまでは、わざわざ役所窓口に出向いて離婚届を提出しなければならず、手続きに手間がかかることが離婚を抑制していた側面もあると言われているからです。
本来冷静に熟考すべき手続きまでオンライン化により簡単に行えるとなると、一時的な夫婦喧嘩の勢いで離婚して後悔する人が増えるかもしれません。

オンラインでの手続きは取り消せる?

電子手続きのキャンセル

上記のような事態に陥った場合に、オンラインでの申請手続きを取り消すことができるのかどうかも課題となっています。

婚姻届・離婚届の無断届出や衝動的な届出を防ぐためには、電子署名・電子証明書等による厳格な本人確認手続きや高度なセキュリティ対策の整備等が求められます。
さらに、万が一、被害が発生した場合には本人が即座に気づいて対策を取れるよう、通知制度の導入等も検討すべきでしょう。

一方的な婚姻・離婚届出への対処法

不受理申出制度

知らないうちに合意なく婚姻届・離婚届等が提出されることを防ぐために従前からあるのが、『不受理申出制度』です。
申出を行う本人の本籍地がある市区町村役場に届出書を事前に提出しておくと、誰かが勝手に婚姻届・離婚届を提出しようとしても、窓口で不受理にしてくれます。

申出を行った本人が役所窓口に直接来て婚姻届・離婚届等を提出した場合に限り、受理されることになります。

婚姻無効の申立

勝手に出された婚姻届が受理されてしまった場合、婚姻無効を家庭裁判所に申立てなければなりません。
いきなり裁判を起こすことはできず、まずは家庭裁判所で調停を行う必要があります(家事審判法18条)。

調停とは、裁判官・調停委員を介して当事者同士で話し合いをする手続きのことです。
調停で合意に至らなかった場合は“調停不成立”となり、審判または裁判に移行します。

離婚オンライン化の背景

制度上オンラインの戸籍届け出はすでに可能だが、押印欄が障壁

少しややこしいのですが、実は2004年4月からオンラインによる戸籍の届出は制度上可能となっています。
つまり、法律的には婚姻届・離婚届をオンライン化することは可能なのです。

しかし、多くの自治体にはこれまで電子署名・電子証明書等の押印に変わる本人確認システムを導入する金銭的・人員的余裕がなかったため、オンラインによる戸籍届け出の構想はあっても実際にはほとんど普及してきませんでした。

今回の発表を受けて、民間企業の弁護士ドットコム株式会社では、官公庁・自治体向けに行政手続きのデジタル化を支援すると発表。デジタル・ガバメント支援室を新設し、官公庁・地方自体向けに電子契約の運用コンサルティング等を提供するとしています。
今後各自治体では、虚偽の申請・なりすまし等の対策を講じながら慎重にオンライン化を進めていくことになるでしょう。

そもそも押印の法的根拠はほぼない⁉本人確認の手段としても疑問

官公庁や自治体役所の手続きでは当然のように押印が要求されてきましたが、実は押印について明記している法律の規定は非常に少ないことをご存知でしょうか。

しかし昔から受け継がれてきた“ハンコ文化”の慣習にならって、申請書には必ずと言っていいほど押印欄が設けられています。押印欄があること自体が、オンライン手続きの導入がなかなか進まなかった一因になっていたという指摘もあります。
婚姻届・離婚届の押印は認印でも良いとされていますが、認印は誰でも簡単に入手可能であるため、そもそも本人確認の手段としての有効性にも疑問が持たれています。

離婚オンライン化後も、署名の維持は前提

インターネット上で賛否両論、多くの意見が上がる中、10月13日、上川法総は法務省が検討中の婚姻届・離婚届オンライン化について、押印の廃止は届け出時の署名は維持することが前提としていると説明しました。

婚姻届や離婚届の押印廃止 署名の維持が前提 上川法相(NHK)

今回の談話では、オンラインによる婚姻届・離婚届の提出時に、どういった形で署名するのか、本人確認を行うか、具体的内容には触れられていませんが、国民の関心の高さもふまえ「丁寧に検討を進めていく方針」が示されました。

オンライン化後の本人確認や制度設計は今後焦点に

押印廃止・オンライン化に対する様々な懸念がありますが、オンライン化に伴い高度な本人確認システムとセキュリティ対策が適用されることで、むしろ今までよりも悪用が減るという見方もあります。
各自治体においては、システム導入・マニュアル整備・職員や市民への研修など、対処すべき課題は山積みです。
導入を急ぐあまり杜撰な制度設計になってしまっては本末転倒なので、慎重な議論が望まれます。

まとめ

政府は“脱ハンコ”政策やデジタル庁の新設を急いで進めていますが、セキュリティ対策の不備による制度悪用や衝動的な離婚を心配する声は後を絶ちません。
もちろん、行政手続き全体の効率化は歓迎されるべきことではあります。
しかし、数ある行政手続きの中でも国民の人生に大きな影響を及ぼすことからとりわけ慎重さが求められる婚姻・離婚については、効率性・容易性よりも確実性・安全性を優先してほしいところです。

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