離婚前に別居する場合の注意点!正しく別居する方法を解説

夫婦喧嘩

別居の期間が長くなったら離婚が認められやすくなります。別居している間には、婚姻費用分担請求もできます。しかし、別居を強行すると、証拠が集められなくなったり悪意の遺棄が成立して慰謝料が発生してしまうおそれもあります。

夫婦の状況によって、別居すべき場合とそうでない場合があり、判断が難しいです。適切に別居して、有利に離婚をすすめるためには、正しい知識を持つことが重要です。

離婚前に別居すべき場合とは?

DV

別居は離婚の要件にはなっていないとしても、離婚前に別居すべき場合があります。それは、どのようなケースでしょうか?

DV、モラハラのケース

まず一番に挙げられるのは、DVモラハラなどのケースです。これらのケースでは、相手と同居していると身に危険が及びますし、相手からの抑圧が強すぎて、まともに離婚交渉を進めていくことが出来ません。まずは家を出て別居して、相手と対等に渡り合える環境を作った上で離婚の手続きを進めていく必要があります。

相手が離婚に応じてくれないケース

次に、自分は離婚したいけれども相手が離婚したくないと言っている場合です。この場合、同居したままでは離婚が認められる可能性は非常に低いですし、相手が考えを変えることも期待しにくいです。そこで、別居をすることで夫婦関係破綻に近づけることができますし、相手も「家を出て行かれた」ということで、考えを変えて離婚に応じることがあります。

相手と同居したくないケース

3つ目に、相手との同居が苦痛なケースです。双方とも離婚には同意していてDVなどの問題はないけれども、不仲になりすぎると同居がお互い苦痛なことは良くあります。そのような中で夫婦が離婚協議を進めようとしても、喧嘩になるだけで話が進みません。相手に借金があることが発覚したようなケースでも同様です。このような場合、いったん別居をしてお互いが冷静になった方が離婚協議を進めやすくなることが多いです。

離婚前の別居によるリスク

関係をやり直すことが難しくなる

一度別居をしてしまうと、多くの夫婦は気持ちが一気に離れていきます。

そうなれば少しでもやり直したいという気持ちがあったり、後々になってやっぱり相手が大切だったと気づいても手遅れになりやすいです。

別居したい欲求が一時的な感情によるもので、まだやり直す可能性があるなら踏みとどまった方がいいかもしれません。

証拠集めが難しくなる

別居をすると物理的に距離が出来るので、相手の財産や浮気の証拠といったものを集めるのが困難になります。

そのため、離婚後に適切な財産分与がされない、浮気で裁判を起こしたいのに証拠が何もないといった状態になりかねません。

悪意の遺棄により不利になる

前述した通り夫婦には同居の義務がありますので、家を出て別居をすることで離婚理由の一つである「悪意の遺棄」になる可能性があります。

そうなると離婚請求をされるのは勿論、「お前のせいで離婚することになった」など相手が主張し、悪質と判断されれば慰謝料を請求されるリスクもあるでしょう。

離婚前に別居しないといけないのか?

ダイニング

夫婦が離婚するとき、離婚前に別居することが多いです。ただし、離婚前に別居しなければならない、ということはありません。日本では、別居は離婚の要件とされていないからです。離婚するまで同居しながら離婚話を続けることもよくありますし、調停や訴訟を同居しながらすすめることもできます。

また、離婚後にも必ず別居しなければならない、というものでもありません。相当なレアケースですが、離婚後もしばらく同居し続ける元夫婦もいます。離婚と別居には直接のつながりはないので、まずは押さえておくと良いでしょう。

別居すると離婚が認められやすいの?

まず、夫婦には同居義務があります。これは、同居をして助け合うことが婚姻の重要な要素だと考えているからです。そこで、別居をしてしまった夫婦は、双方が助け合って同居する義務を放棄してしまったと言うことですから、離婚が認められやすくなります。

また、実際に離婚しようという相手と一緒に暮らし続けることには苦痛を伴います。そこで、これから離婚したい人は、離婚話をすすめる際、まずは別居することが多いです。実際に、離婚が争いになるときに別居していると同居している事案より離婚が認められやすくなります。たとえば、自分は離婚したいけれども相手が離婚を拒絶している事案では、別居している方が離婚が認められやすいので、まずは家を出て別居するところから始める人も多いです。

何年別居したら離婚できるのか?

別居何年で離婚になる?

別居した方が離婚が認められやすいとは言っても、別居したからと言って必ずしも離婚が認められるわけではありません。特に、民法の定める離婚原因がない単なる性格の不一致などのケースでは、そのままでは離婚が認められにくいです。

こうしたケースでは、一定期間別居期間をおくことによって離婚を認めてもらいやすくすることができます。別居期間が長くなることで、夫婦関係が破綻していると認定されやすくなるからです。離婚が認められるまでの別居期間は決まりがあるわけではありませんが、5年くらいが標準的です。事案にもよりますが、最低でも2年は別居期間が必要です。

協議離婚なら別居しなくても離婚できる

ただ、これは5年経たないと相手と離婚協議してはいけない、という意味ではありません。この期間は、裁判で離婚を認めてもらうための期間なので、自分たちで話しあって離婚する場合には、その期間にとらわれる必要がないからです。別居したらすぐに相手と離婚の交渉や調停をすることができますし、その中で離婚についての話合いが成立したら、別居後1年以内でも協議離婚や調停離婚ができます。

別居したら相手に連絡先を伝えないといけないの?

一般的に連絡先を伝えるべき

離婚前に別居したとき、相手に連絡先を伝えるべきかという問題があります。これについて、通常のケースでは伝えるべきと考えます。離婚交渉をするためにもお互いの連絡先は必要です。ただ、すべての情報を明らかにする必要はないので、連絡が取れる最低限の内容を伝えておくと良いでしょう。たとえば電話番号のみ伝えるとか、メール徒電話番号を伝えるなどです。もちろん住所と電話番号とメールなど、全部伝えても問題はありません。

DV事案では連絡先を伝えてはいけない

ただ、注意しないといけないのは、DVなどで家から逃げ出した場合です。この場合には、相手に連絡先を伝えると、相手が家を調べて押しかけてくる可能性があります。そうなったら、暴力を振るわれるおそれもありますし、家に連れ戻されるおそれもあり、何のために別居したのかがわかりません。実際、DVシェルターや保護施設に入ったときには、外部に連絡先を伝えることを禁止されます。

そこで、これらの危険がある事案では、相手に今の連絡先を伝えてはいけません。電話番号を変えていなくて相手からしつこく着信が来たりメールが来たりして居場所を問いただされても、応答してはいけません。「警察に捜索願を出した」などと脅されることもありますが、放っておいても問題はないので、くれぐれも相手に連絡先を教えることのないようにしましょう。自分では適切似対処できない場合には、弁護士に対応してもらいましょう。

別居中の生活費はどうなるの?

お金

婚姻費用として請求出来る

相手と一緒に住みたくないから別居したとき、生活費が心配なケースがあります。相手が家を出て行った場合にも同じです。このように、別居中の夫婦には、婚姻費用分担義務があります。婚姻費用とは、夫婦の生活費のことです。

夫婦はお互いに助け合う義務があるので、生活費についても出し合わなければなりません。そこで、収入のある配偶者は収入のない配偶者に対し、生活費を出さないといけないのです。

相手が家を出て行った場合や自分が家を出た場合、相手に収入があれば、婚姻費用分担請求ができます。別居前に生活費についての取り決めをしておけばそのとおりに支払ってもらうと良いですし、別居前に取り決めをしていなかった場合には別居後に相手に請求して支払ってもらうことができます。

婚姻費用分担調停を利用できる

相手が任意で支払をしない場合には、家庭裁判所で婚姻費用分担調停をすることによって、相手から支払いを受けることができます。家庭裁判所では、相手が任意に支払いに応じない場合には、審判によって相手に支払い命令を出してくれるので、安心です。

相手が離婚を拒絶している場合にも利用できる

なお、婚姻費用分担請求は、相手が離婚を拒絶しているときにも効果的です。自分は離婚したいけれども相手が離婚を拒絶している場合、そのままでは離婚することができません。ここで、いったん別居をして相手に婚姻費用を支払ってもらう約束を取り付けます(調停、審判でも可)。すると、相手は離婚に応じるまで高額な婚姻費用を支払い続けないといけないので、大変な負担を負います。

このように婚姻費用の負担をしても、妻や子どもが家に戻ってくるわけでもありません。このような状況が続くと、相手も根負けして離婚に応じることがあります。そこで、自分は離婚したいけれども相手が離婚してくれないときには、まずは別居して婚姻費用分担請求することが効果的な対処方法となります。

相手に戻ってきてほしいときにはどうする?

自分が別居したくないのに、相手が別居を強行してしまうケースがあります。このような場合、相手に戻ってきてもらうことはできないのでしょうか?

ここで利用できる手続きは、夫婦関係調整調停です。家庭裁判所の調停手続きの1種で、同居調停とも呼ばれます。同居調停では、出て行った相手に対し、家に戻ってきてもらうことを話しあうことができます。調停委員が間に入って話を進めてくれるので、相手も冷静になって話しをして、結果として家に戻ってきてくれることがあります。ただ、同居調停では相手に同居を強制することができません。相手が同居に納得しなければ、調停は不成立になって終わってしまいます。

別居を強行すると離婚慰謝料が発生する?

悪意の遺棄になってしまうおそれがある

相手が離婚を望んでいないのに自分が離婚を望んでいるとき、別居をする方法には注意が必要です。このとき、何も考えずにいきなり家を出ると、「悪意の遺棄」が成立してしまうおそれがあります。悪意の遺棄は民法上の離婚原因にもなっていますが(民法770条1項2号)、相手のことを悪意を持って見捨てる、ということです。悪意の遺棄が成立してしまったら、自分の方から相手に離婚請求することができなくなってしまいますし、離婚するときには相手から慰謝料を請求されてしまいます。

悪意の遺棄が成立するパターン

悪意の遺棄が成立する典型的なパターンは、「別居して生活費を払わない」ケースです。
別居をするときには、必ず相手ときちんと話をして、どうしても別居がやむを得ないという結論になったときに、生活費の話合いもした上で別居するのが理想です。

別居が悪意の遺棄にならないケース

ただ、これは自分が収入があって相手が収入の無い主婦などのケースを念頭に置いています。たとえば、DV被害者の妻が別居するときなどにはまったくあてはまりません。このようなケースでは、もちろん相手との話し合いをせず、むしろ相手に気づかれないうちにいきなり家を出ないと危険です。

個別の判断がわからない場合には弁護士に相談しよう

このように離婚前の別居方法は、ケースに応じて対処方法がかなり異なるので、間違った判断をしないためには弁護士に相談することが重要です。

浮気しているときに別居するとどうなる?

浮気

浮気しているときに無理矢理別居すると不利になる!

自分が浮気をしているときに別居する場合にも問題があります。このとき、浮気相手のもとに走ってしまうことなどもありますが、そのようなことをすると浮気がバレて、一気に状況が不利になります。通常一般の事案であれば悪意の遺棄にならないケースでも、浮気が原因で一方的に家を出た、ということになってしまったら悪意の遺棄と認定されることもあります。そうなったら、不貞の慰謝料と悪意の遺棄の慰謝料が両方発生して、支払い額が相当大きくなってしまうおそれもあります。

浮気しているときに別居するときの注意点

そこで、自分が浮気をしている場合の別居には十分慎重になるべきです。別居をしたい気持ちはわかりますが、不自然に急ぎすぎないことが大切です。相手としっかり話をして、できれば納得してもらってから別居しましょう。また、別居後の生活費もきちんと支払うことが大切です。浮気をしている場合、婚姻関係のある妻にはばからしくてお金を払う気になれないものですが、そうすると離婚で不利になってしまうので、冷静になって我慢して払いましょう。

そして、間違っても浮気相手の家に転がり込んだり浮気相手と同居したりしてはいけません。できれば、浮気相手の家の近くに住むのも避けるべきです。浮気をすると言うことはそれなりにリスクをとるということですから、これくらいの注意と覚悟は必要です。

子どもがいるときの別居と離婚問題

子供

子どもがいるときの別居方法にも注意が必要です。この場合、子どもを連れて出るか置いて出るかという問題があります。子どもの親権者について争いがない場合には、子どもの親権者になる側が子どもと一緒に住むようにすれば良いですが、どちらも親権を望んでいる場合には、勝手に子どもを連れて出ると子の連れ去りとみなされるおそれがあります。

そこで、子どもがいる場合に別居したいなら、離婚するまでどちらが子どもの監護者となるか、きちんと相手と話しあいましょう。もし話合いができないなら、家庭裁判所で監護者指定調停や審判を利用して、子どもの監護者を決めてもらいましょう。

別居前の注意点

別居前に財産分与などの証拠集めを!

離婚前に別居するとき、別居前に注意点があります。それは、別居前に集められる証拠を集めておくべきだと言うことです。

同居中は、別居後には得られないたくさんの証拠を得られるものです。たとえば、相手が浮気をしている場合には相手のスマホやメール、PCなどをチェックして怪しい点がないか探せますし、電話の履歴やクレジットカードの利用明細書、相手が置き忘れているメモ類などもチェック出来ます。相手の行動がつかみやすいので、興信所に依頼して行動調査をしてもらう場合にもやりやすいです。

具体的な資料の例

財産分与の準備として、家の預貯金通帳や生命保険証書、不動産についての書類や投資信託などの関係書類も集めることができます。このような離婚についての資料は、別居後には入手できなくなるので、同居中にすべてコピーをとるなどして控えておく必要があります。別居後、「あれもとっておけば良かった!」ということにならないよう、別居前に十分資料を集めておきましょう。

別居するなら、まずは弁護士に相談しよう

以上のように、離婚前に別居することは非常に多いですし、別居することで離婚しやすくなる等のメリットはあります。ただ、それも事案によりけりで、間違った別居方法をとってしまうと悪意の遺棄となって逆に離婚請求できなくなったり、慰謝料を請求されたりするおそれがあります。

DV事案などでは、相手が納得していなくても別居を強行する必要がありますが、反対に別居の強行によって不利になるケースもあります。自分に収入が無いのに相手が出ていって困っているときには、相手に対して婚姻費用分担請求をすることも可能です。

このように、離婚と別居の問題については、非常に検討すべき課題がたくさんあり、すべてを自分の判断だけで適切に行うのは難しいです。今後離婚を有利に進めるために別居したい人や、相手が家を出て行ったので困っている人などは、まずは離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

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