配偶者のうつ病は離婚事由になる?鬱が原因で離婚したい場合の進め方と注意点

うつ病になった女性

配偶者がうつ病になったら、当初は婚姻生活を維持しようとしても、苦しくなって離婚を考えることがあります。この場合、相手のうつ病の程度によって離婚できるかどうかが変わりますし、相手が離婚に応じるか応じないかでも対応が変わります。子どもへの影響も考えないといけません。1人で悩む必要はないので、弁護士に相談しましょう。

本記事では、うつ病は離婚原因になるのか、相手がうつ病の時の離婚の進め方、親権の行方など、うつ病になった配偶者との離婚を考えている方が知っておくべきことを中心に解説していきますので、参考にしてください。

配偶者のうつ病は離婚原因に成り得る

うつ病の相手と離婚することに決めたら、具体的に離婚に向けて手続きを進めていかなければなりません。日本では、夫婦が話合いによって離婚をする場合には離婚理由は不要ですが、相手が離婚に応じてくれない場合には、裁判によって離婚をしなければなりません。その際「裁判上の離婚原因」が必要です。

うつ病自体が、裁判上の離婚原因に成り得る事由としては主に以下の2つ該当します。

回復しがたい精神病に該当する場合

相手がうつ病の場合、問題になるのはこの「回復しがたい精神病」でしょう。この要件に該当するかどうかについては、項目を分けて詳しく説明します。

回復しがたい精神病とは?

回復しがたい精神病とは、将来にわたって回復する見込みのない重大な精神病です。具体的には、統合失調症や若年性認知症、躁うつ病や偏執病などで程度が重いものが該当します。反対に、ノイローゼやアルコール依存症、薬物依存症などは該当しないとされています。

それでは、うつ病はどちらになるのでしょうか?うつ病は、適切な治療をすれば治ることも多い病気です。うつ病=回復しがたい精神病と評価してもらうことは困難です。

ただ、長期間治療を継続しても回復の見込みが立たず、程度も酷くて自殺未遂を繰り返している場合、普通のコミュニケーションもとれず惚けたような状態が続いている場合などには、あるいは回復しがたい精神病と認めてもらえる可能性もあります。

強度のうつ病なら、離婚できるのか?

仮に、相手のうつ病が強度で回復の見込みが立たない場合、常に離婚が認められるのでしょうか?

実は、回復しがたい精神病の場合、それだけでは離婚が認められないことが普通なので注意が必要です。病気の要件に足して、以下の2つの要件が必要となります。

  • それまで、配偶者の回復のために協力し、婚姻生活の継続のために努力を尽くしてきたこと
  • 精神病の配偶者の離婚後の生活保障があること

つまり、相手が回復しがたい強度なうつ病であったとしても、まずは相手の治療のために力を尽くし、家庭を維持するために努力をすることが必要です。たとえば、相手を病院に連れて行って適切な治療を受けさせること、家でもできるだけのケアをしていた事情などがないと離婚できません。手を尽くしてもどうしても婚姻の継続ができないというケースにおいて、ようやく離婚が認められます。

また、離婚後にうつ病の配偶者が生活に困らないことも重要です。離婚されたら相手の生活の目処が立っていない場合、裁判をしても離婚が認められにくいです。たとえば、相手が実家に帰って生活ができる、障害者年金をもらって何とか自活していける場合などには、離婚が認められる可能性があります。

その他婚姻を継続し難い重大な事由に該当する場合

相手がうつ病の場合、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」が認められることによって離婚ができる例も多いです。

その他婚姻を継続し難い重大な事由で離婚できるケース

うつ病の配偶者と離婚をするとき「その他婚姻を継続し難い重大な事由」によって離婚が認められるケースもありますが、この要件は抽象的なので、実際にどんなケースなのかがイメージしにくいことが多いでしょう。具体的にはどんな例があるのでしょうか?このとき、キーポイントとなるのは、別居期間と夫婦のお互いの意思です。

別居期間が長いと離婚しやすい

まず、別居期間が長期に及んでいたら、離婚が認められやすいです。たとえば、もともとの別居原因があいてのうつ病であったとしても、別居期間が5年や10年になると、離婚しやすくなってきます。

夫婦にやり直す医師がなければ離婚しやすい

また、夫婦のお互いの意思も重要です。夫婦がお互いにやり直す意思を持たない場合には、離婚が認められやすいです。うつ病の相手は、「やり直したい」という前向きな希望を持たないことも多いので、離婚すること自体はさほど難しくない例も多いです。

以上のように、うつ病の相手との離婚が認められやすい例は

  • 長期間別居状態が続いていて、夫婦がお互いやり直す意思を持たないとき

です。夫婦にやり直す意思がないなら、別居期間が1年や2年などであっても離婚できることはあります。

夫のうつ病が原因で離婚をした体験談

ある日突然夫がうつ病になっているとわかったら、どんな風になってしまうのでしょうか?ここで、夫のうつ病が原因で離婚をしたAさん(30代 女性)のお話を聞いてみましょう。

Aさんのケース

私は、22歳のときに結婚しました。夫とは恋愛結婚で、夫はそこそこ有名なメーカーのサラリーマンで真面目な性格でしたし、夫婦関係にまったく問題はありませんでした。そのうち子どもができて、女の子が生まれました。

夫が突然うつ病に!

ところが、結婚して7年くらい経ったとき、夫の様子が少しずつ変わり始めました。それまで快活だったのに、家でもほとんどしゃべらなくなり、あんなにかわいがっていた子どもの相手もしなくなりました。それどころか、子どもがかまってほしくて夫に近づくと、夫は子どもをはねのけたので、それ以降子どもは夫を恐れて近寄らなくなってしまいました。

私は、当初夫が不倫でもしているのかと思いましたが、どうも様子がおかしいのでよくよく見ていたら、夫はときどき「何のために生きているんだろう」「死にたい…」などと言っているのです。表情もほとんどなくなっていて、私は、これは絶対におかしいと思いました。そして、夫と一緒にメンタルクリニックに行くと、「うつ病」と診断されました。

すぐに会社に連絡を入れて、仕事をしばらく軽くしてもらうようにお願いしました。そして、薬などを飲みながら治療を続けることになりました。しかし、夫の状態はなかなか良くならず、気分にむらも大きくて、突然脈絡もなくいろいろなことを話したかと思ったら、黙り込んで部屋にこもって寝たきりになってしまうこともあり、私たちは振り回されました。また被害妄想も強くて、「君だって僕なんかと結婚したのが間違いだと思っているだろう」などと言って私を責めてくるので、辛かったです。

生活ができなくなって、実家に戻りました

夫は仕事を軽くしてもらったり休業したりしながら何とか会社を辞めずにいたのですが、それもいよいよ厳しくなって、ついに仕事を辞めてしまいました。すると、収入がなくなったので、私たちは生活していけなくなり、私は子どもを連れて実家に帰るしかありませんでした。

親は、「早く離婚した方がいい。〇〇(子どもの名前)のためにも早く離婚しなさい」と言うので、私も迷いましたが、最終的にはそれしかないのかな、と思い、夫に離婚の意思を伝えました。夫も実家に戻っていたのですが、私が離婚を告げると夫の親が怒って「そんなことを言わないでくれ!病気がひどくなる!」と言ってきました。

離婚調停でようやく離婚しました

私は、実家の両親とも相談をして、離婚調停をすることに決めました。そして、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停委員を介して話し合いをしました。夫は弁護士を立てたみたいで(私も弁護士に依頼したのですが)、弁護士の意見も交えた話合いになりました。夫は最初、私に対して慰謝料を求めたり、子どもの親権を主張したりしたのですが、慰謝料の支払い原因はありませんでしたし、夫が子供を育てられないのは明らかだったので、私が親権者になり、離婚をしました。財産はほとんどなかったので、財産分与もありませんでした。

今は、実家から出て子どもと二人で暮らしています。夫とはあの後音信不通になってしまったので、今どこでどうしているのかまったくわかりません。子どもには、「お父さんは遠くで活躍している。今は忙しくて会えないけれど、いつか会えるといいね」などと説明しています。

配偶者のうつ病が原因で離婚すべきタイミング

離婚するタイミング

配偶者がうつ病になったとき、離婚しようかどうか迷ってしまうのが普通です。「本当に後悔しない?」「治るかもしれない」「子どものためにももう少しがんばった方が良いのでは?」など、考えることはとてもたくさんあります。相手のうつ病が原因で「離婚すべきタイミング」は、いつなのでしょうか?以下で、代表的なものを紹介します。

  • 収入が途絶えて家族が生活できないとき
  • 子どもの様子がおかしくなったとき
  • 自分がおかしくなりそうなとき

収入が途絶えて家族が生活できないとき

まず、経済的な問題で、家族の生活ができなくなったときです。うつ病の配偶者が一家の大黒柱で会ったケースでは、相手がうつ病にかかることにより、仕事ができなくなって収入が途絶える例があります。完全に途絶えなくても、最低限の収入しかなくなって生活費が足りなくなることがあるでしょう。こうしたとき、借金してまで家族生活を維持するべきではありません。借金をすると、結局返済ができなくなって、さらに状況が悪くなるだけだからです。返済の目処が立たないのに借金をしても、首を絞めるだけです。

また、自分が働くことによって支えられる場合、可能な範囲ならかまいませんが、無理をするのは禁物です。相手の収入が途絶えたことで離婚、というと、なんだかお金目当てで相手と一緒にいたようで気持ちが悪いと思うかもしれませんが、そのような考えをする必要もありません。夫婦は助け合うのが当然で、今まで夫が働いて収入を得て、妻が家事育児をして家を守る、と言う形ができあがっていたところ、その均衡が壊れたので生活が破綻した、というだけのことです。

生活が崩壊して家族全体が路頭に迷うくらいなら、早めに見切りをつけて離婚する方が、みんなのためになります。

子どもの様子がおかしくなったとき

親の不調は、子どもにも大きな影響を与えます。子どもは、親が思っている以上に周囲をよく見ていますし、状況を把握しているものです。親が不仲になったら、どれだけ繕っていてもすぐに気づきますし、親がうつ病で会社に行かなくなって家に閉じこもっていたら、異変にはすぐに気づきます。親を元気づけようとしてうつ病の親に甘えていくことなどもありますが、うつ病の本人には子どもをかまう余裕がないので、子どもを邪険に扱い、子どもが傷ついてしまいます。親の様子がおかしくなったことは自分のせいだと思い込んで、自分を責めて苦しんでしまう子どももいます。そして、子どもは、こうした不安を口に出すことができないので、おねしょなどの行動に表れてしまいます。

夫がうつ病になったら、どうしても夫ばかりに関心が向かいがちですが、子どもの方にも目を向けることが大切です。子どもが、以前は明るかったのに無口になっていないか、食欲がなくなっていないか、急におねしょなどしていないか、チック症状などが出ていないかなどを見て、もし異変があるなら、離婚を視野に入れた方が良いタイミングかもしれません。

自分がおかしくなりそうなとき

うつ病の配偶者がいると、毎日が大変です。相手1人に家計を頼ることができないので、自分も働きに出ることが多いですが、「仕事も相手の看病も家事も育児も全部自分一人でやらなきゃ!」という状況になったら、長続きしないのが当然です。無理をすると、結局自分も倒れてしまいますし、自分も同じようにうつ病などになってしまう可能性もあります。いったんうつ病になったら、たとえ離婚をしたとしても、その後精神病を抱えて生きていかないといけませんし、子どもに対する悪影響もより大きくなります。

そこで、相手がうつ病になり、いろいろと「疲れたな…」と感じたら、無理をしないで離婚を考えるべきタイミングかもしれません。

弁護士に相談して意見を聞く

自分一人で離婚すべきかどうか決められないなら、弁護士に相談に行って、意見を聞きましょう。弁護士だからと言って、「離婚しましょう」と進めてくるものではありません。むしろ、本人が「離婚したいです!」と言って相談に行っても「もう少しがんばってみては?」というアドバイスをくれる弁護士も多いのです。そこで、「弁護士なんかに相談に行ったら離婚を急かされるだけだ」、と思って心配する必要はありません。また、弁護士には守秘義務があるので、話した内容が外に漏れるおそれもありません。

離婚すべきタイミングかどうかがわからないとき、「限界かも」と思ったとき、まずは弁護士に相談に行くと、気持ちが楽になって、進むべき道が見えてきます。

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配偶者がうつ病のときの離婚の進め方

離婚に向けた協議

それでは、相手がうつ病の場合、どのような手順で離婚をすすめたら良いのでしょうか?以下でその段取りを説明します。

  1. まずは証拠を集める
  2. 協議離婚の話合いをする
  3. うつ病では、協議離婚が難しいことがある
  4. 別居して、離婚調停を申し立てる
  5. 調停でも話ができないなら、裁判で離婚を認めてもらう
  6. うつ病が重症の場合、成年後見人が必要になることも

まずは証拠を集める

どのようなケースでも言えることですが、離婚をすすめるときには、証拠を集めることが大切です。相手のうつ病が原因で離婚したいなら、相手が病気であることの証明のため、診断書や診療報酬の明細書、領収証、薬代の領収証などがあると良いです。会社に提出した休業の申請書の写しや会社からもらった書類、減給があったらそれを証明するために、以前と以後の給与明細書や源泉徴収票なども必要です。

このような資料は、離婚交渉を始めてしまうと集められなくなることも多いので、事前にすべてコピーをとっておきましょう。

協議離婚の話合いをする

相手と離婚をするときには、協議離婚の話合いをすることから始めます。うつ病の相手に対して「離婚したい」と言うと、相手の調子が悪くなってしばらく大変になることがありますし、なかなか切り出しにくいことも多いですが、いつかは言わないといけないことなので、勇気を持って切り出しましょう。相手が離婚に応じてくれる場合には、話し合って離婚条件を決めましょう。未成年の子どもがいるなら子どもの親権と養育費を決めなければなりません。夫婦に共有財産があれば財産分与もしなければなりません。

また、相手がうつ病の場合、離婚後の相手の生活も考えなければなりません。実家に帰ることができる環境であればそれが最も良いでしょうけれど、それができない人は、自活していかなければならないので大変です。ときには、相手の離婚後の生活保障のため、財産を渡さないといけないこともあるでしょう。

相手のうつ病が原因で離婚する場合、こちらは必死でがんばってきていることが多いので、本当なら相手から慰謝料や解決金を払ってほしいところですが、そういったことはなかなか難しいことが多いです。

うつ病では、協議離婚が難しいことがある

相手がうつ病の場合、夫婦がお互いに話し合いをしても、合意ができないことは多いです。うつ病の相手は、離婚と言われただけで非常に気分が落ち込んで話など全くできなくなることもありますし、話し合いをしても条件が整わないことも多いからです。うつ病の本人にしてみたら、離婚されることでますます見捨てられたという気持ちになりますし、「離婚したくない」と言い出す人もいます。

反対に、これまで必死で看護してきた配偶者の側からすると、離婚の話合いをきっかけにして、これまでのストレスや不満が一気に噴き出して、「慰謝料を支払ってほしい」「財産は全部ほしい」などと言い出してしまいます。すると、当然双方の意見が合わず、話合いは成立しません。

別居して、離婚調停を申し立てる

夫婦が自分たちで話をしても合意ができない場合や、そもそも相手に離婚を切り出すことができずに離婚の話合いすら始められない場合には、離婚調停を利用して離婚の話し合いをしましょう。そのためには、まずは別居をすることをおすすめします。うつ病の相手と同居していると、いつ何時自殺未遂などをされるかもわからないですし、どのような行動に出られるかわからないので、離婚調停どころではなくなってしまうことがあるためです。相手と離れて暮らしていたら、とりあえず自分のペースで生活ができるので、調停をすすめていくことができます。

離婚調停を申し立てたとき、相手の調子がそこそこ良ければ、相手自身が家庭裁判所に来て、離婚の話合いをすることができるでしょう。調停では、調停委員が間に入ってくれるので、相手と直接顔を合わせて話をする必要がありませんし、相手を直接説得する必要がないので、とても気が楽ですし、話も進みやすくなります。

調停で、お互いに離婚することと離婚条件についての合意ができたら、調停が成立して離婚をすることができます。

調停でも話ができないなら、裁判で離婚を認めてもらう

離婚調停は、話合いの手続きなので、調停が成立するためには夫婦の意見が一致する必要があります。しかし、相手がうつ病の場合、言っていることがコロコロ変わったりすることもあり、調停による合意が難しくなることも多いです。その場合、調停での解決が困難になるため、離婚訴訟によって離婚を認めてもらう必要があります。

離婚訴訟では、「裁判上の離婚原因」がないと、離婚を認めてもらうことができません。相手のうつ病を回復しがたい精神病として認めてもらえたり、相手も婚姻継続する意欲がなくその他婚姻を継続し難い重大な事由があったりする場合などには、判決によって離婚することができます。

裁判上の和解で解決できることも多い

また、裁判には、「和解」という手続きがあります。和解とは、訴訟の最中に、当事者が話し合いによって問題を解決する方法です。この場合、裁判官が間に入って話合いを仲介してくれますし、裁判所が和解案を提示してくれることもあります。相手がうつ病の場合、お互いに妥協をして和解をした方が良い解決につながることも多いです。いったんは離婚訴訟を提起しても、その後裁判所から和解の勧告があったら、いったんはテーブルについて、前向きに話を進めると良いでしょう。

うつ病が重症の場合、成年後見人が必要になることも

うつ病が重症の場合、本人を相手に離婚手続きを進めることができない

相手がうつ病で重症の場合、そのままの状態では離婚の話合いができないことがあります。たとえば、相手が正常な判断能力を失っていて何も決められない状態になっていることもありますし、口をきくことができなくなっていることもあります。このような場合、相手と直接話合いをすることもできませんし、調停をすることもできません。たとえ裁判をしても、「意思能力」がないとされて、裁判をすすめることもできなくなってしまうおそれがあります。

意思能力とは、法律的な行為の意味を理解して、有効に法律行為をするために必要な能力です。うつ病の程度が酷い場合、そうした理解力、判断力がなくなっているので、一人では離婚するかどうかを決めることができないのです。こうした意思無能力の人が行った行為は無効なので、うつ病の相手に無理矢理離婚届を書かせても、離婚が無効になってしまうおそれがあります。

成年後見人を選任してもらう必要がある

意思能力の無い人と離婚をするためには「成年後見人」を選任する必要があります。成年後見人とは、本人の判断能力がないのが常になっている場合に、本人の代わりに財産を管理したり身上監護をしたりする人のことです。成年後見人が選任されたら、その人と離婚の条件を話合い、成年後見人に離婚届に署名押印してもらうことによって、協議離婚をすることができます。離婚調停のケースでも、成年後見人に出頭してもらって話合いをすることになりますし、離婚訴訟の場合でも、成年後見人を相手に訴訟を提起して、審理を進めていくことになります。

ただ、うつ病の場合に成年後見人が必要になるのは、相当重度なケースに限られるので非常にレアです。一般の普通のうつ病の人と離婚するときには、本人を相手にしていて問題はありません。

うつ病の相手に慰謝料請求できる?

うつ病の人と離婚するとき、慰謝料請求をすることができるのでしょうか?慰謝料が発生するのは、夫婦のどちらかに有責性がある場合です。有責性というのは、違法行為によって離婚原因を作ったことだと理解すると良いです。たとえば、不貞した場合、DVがあった場合、生活費を支払わなかった場合などに慰謝料が発生します。

相手に慰謝料請求できることは少ない

しかし、相手がうつ病の場合、相手も好きでうつ病になったわけではありませんし、相手に責任はありません。そこで、相手に慰謝料を請求することは難しいのが普通です。もし、うつ病になった相手が不貞をしていたり、給料があるのにあえて渡さないなどの行為があったりした場合には、慰謝料が発生する可能性もあります。

慰謝料支払い義務はあるのか

相手がうつ病の場合、反対に、自分が慰謝料を支払わなければならないのかも問題です。相手からは「うつ病になったのはあなたのせいなのだから、慰謝料を支払ってほしい」などと言われることもあります。これについても、基本的には発生しないと考えて良いです。夫婦の関係が正常でも相手がうつ病になることはあり、必ずしもうつ病が配偶者のせいだということにはならないからです。

ただ、配偶者の不貞やDVなどの問題行為がきっかけで相手がうつ病になった場合などには、慰謝料が発生します。

うつ病の相手との財産分与はどうなる?

うつ病の相手と離婚をするとき、財産分与がどうなるのかも問題です。財産分与については、相手がうつ病だからといって特別扱いはありません。基本的に、夫婦共有財産を洗い出して、それを2分の1ずつに分けます。裁判をしても、そのような内容の判決が出ます。

しかし、相手がうつ病で離婚後の生活保障が不安な場合などには、相手の離婚後の生活のため、多めに財産分与を渡す例があります。場合によっては、全部の財産を渡して離婚をしてもらう、というケースもあるでしょう。

反対に、夫がうつ病で長年妻に世話をかけたあげく、治らないのでいよいよ離婚する、というようなケースでは、妻に対するねぎらいの意味を込めて、妻にほとんどの財産を分与することもありますし、慰謝料代わりにすべての財産を渡すということもあります。

このように、うつ病のケースでは、財産分与に一般とは違った配慮をしたり、違った役割を求めたりすることが多いです。これらの金銭支払い方法に工夫をすることにより、上手に離婚をすすめることができることもあるので、わからないときには弁護士に相談してアドバイスを求めましょう。

うつ病の相手に養育費の請求はできる?

相手がうつ病の場合、子どもの養育が難しいために配偶者が子どもの親権者になることが多いですが、その場合、うつ病の相手に養育費の請求をすることができるのでしょうか?

法律上、子どもと同居していない場合、子どもの親であれば養育費を支払わなければならない制度となっています。しかし、これは、養育費の支払い者の生活が維持できることが前提です。法律も、自分の生活もできない人に対し、「借金してでも養育費を支払え」、などという考え方はしていません。養育費の支払い義務があるのは、ある程度収入がある人だけであり、養育費の金額も、その収入から支払える範囲内となります。

相手がうつ病でも、それなりに収入があるならそれに応じた養育費の支払いを請求することができますが、職を失っていて収入がないケースなどでは、支払いを受けることはできません。相手がうつ病で仕事ができなくなり、生活が破綻して離婚するケースでは、慰謝料も財産分与ももらえず、養育費の支払いも受けられない可能性があり、離婚の際に多額の給付を受けるのは難しくなることが多いです。

相手がうつ病の場合の親権は?

うつ病の相手と離婚する場合、子どもの親権がどうなるのかも問題ですが、これについても、うつ病の程度によります。

相手のうつ病の程度が酷く、子どもを到底養育できない場合には、相手が親権を主張しても認められませんので、自分が子どもの親権者になることができます。また、相手がうつ病の場合、そもそも相手は親権を主張しないことも多いです。

これに対し、相手のうつ病の程度が軽い場合には、必ずしも親権者になれないとは限りません。うつ病でも、程度が軽ければ十分に子どもの監護養育ができますし、うつ病の相手と親権争いをしたとき、相手の方が適任と判断されたら、裁判所がうつ病の配偶者を親権者として指定することもあります。

そこで、相手がうつ病だからといって、それだけで自分が親権者になれると決めつけて行動していると、後で思わぬ結果になることがあります。親権をとりたいなら、相手がうつ病であるかどうかに関わりなく、常日頃から親権者として適切な行動をとるべきです。

自分がうつ病になって離婚する場合

自分がうつ病になるケース

結婚生活においては、自分がうつ病になってしまうケースもあります。この場合、どのような問題があるのでしょうか。

自分がうつ病になった場合でも慰謝料請求は認められない

自分がうつ病になった場合、相手に慰謝料請求することはできるのでしょうか?

まず、「うつ病になった」というだけの理由では、慰謝料請求は認められません。慰謝料が発生するためには、相手に有責性が必要だからですが、自分がうつ病になったのは、相手のせいとは言えないのが普通だからです。

これに対し、相手の不貞やDVなどの有責行為が原因でうつ病になった場合には、その有責事由を理由として、慰謝料請求することができます。その場合、「うつ病だから〇〇円の慰謝料」という方法ではなく、うつ病になったという事情があるため、一般の不貞やDVのケースよりも慰謝料が増額されることが多いです。

うつ病になった場合でも親権をあきらめる必要はない

自分がうつ病になってしまったら、子どもの親権を取れなくなるのかが心配になる人が多いです。この点、うつ病だからと言って親権がとれないわけではありません。世の中には、うつ病だけではなく統合失調症やパニック障害、躁うつ病などのいろいろな病気を抱えた人もいますが、こうした人でも子どもの親権者となって、立派に子供を育てています。子どもの養育が可能な状態であれば、裁判で親権を争ったときに親権を認めてもらうこともできます。

うつ病にも程度があります。病気があっても、普通に生活ができて子どもとの関係も良好で、監護養育能力があるなら、親権を認めてもらうことは可能です。特に、実家で親と同居するなどして、親のサポートを受けられると、より安心で親権を認めてもらいやすいです。うつ病になって離婚するときにも、親権をあきらめる必要はありません。

うつ病と離婚のことで悩んだら弁護士に相談しよう!

夫婦のどちらかがうつ病になると、家の中の雰囲気も暗くなりますし、お互いが辛くなります。まずは、治療を試みて回復させるために努力をすべきですが、どんなにがんばっても治らないこともあります。相手が仕事を失い、家族の生活が維持できなくなっても無理にがんばっていると、共倒れになってしまいます。そんなことになる前に、弁護士に相談して意見を求めましょう。

うつ病の相手と離婚をするときには、別居をして調停をした方が良いケースもありますし、慰謝料や財産分与の方法も工夫した方が良いことが多いです。子どもがいる場合には、親権も問題となりますし、お互いの離婚後の生活のことも考えないといけません。自分たちで拙速に決めてしまったら後悔することもあります。

今、相手のうつ病が原因で離婚しようと考えている方や、自分がうつ病になってしまい、相手と離婚しようと考えている方は、まずは一度、離婚問題に強い弁護士に連絡を入れて法律相談を受けることをおすすめします。費用が心配な場合、無料相談ができる事務所もあるので、是非とも活用しましょう。

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