知らないと損する離婚後の年金の仕組み|年金分割制度の分割方法も解説

年金の分け方

年金分割の仕組みは、離婚をする前に必ず押さえておかなければなりません。できれば事前に年金事務所に出向いて、詳しく話を聞いておくのが賢明でしょう。

離婚の前に、「年金分割」の仕組みを知っておきましょう!

年金受給はかなり先。とはいえ、いずれ自分の命綱

若い年齢で離婚を考える人は、当面の慰謝料や財産分与・養育費のことには熱心でも、「年金分割」となると遠い先のことなのでピンとこないかもしれません。実際、「数十年後には年金制度が破綻しているのでは?」などという懸念も出ていて、ますます関心は薄れてしまっています。

しかし、婚姻中であれば“年金のことは主人にお任せ”というのも有りですが、いざ離婚をするとなったときには、しっかりと年金分割のことを把握しておく必要があります。なぜなら、離婚後に60代・70代になったときに、子どもの世話にならずにひとりで生きていく場合は、年金が命綱のように大事なものになるからです。

もちろん再婚するという可能性もあるでしょうが、まずは“老後までひとりで立って生きられる方法”を模索することが、離婚するにあたっては非常に重要なことといえます。

「年金分割」は、離婚前の婚姻期間中のみ。厚生年金部分の半分です

夫の年金受給”総額の半分”ではなく、婚姻期間中の厚生年金の半分

日本の公的年金は2階建てになっていて、1階が国民年金(基礎年金)、2階が厚生年金になっています。このうち年金分割に関係があるのは、2階の「厚生年金」のみ。婚姻期間中の厚生年金の半分が、離婚後の妻に分割されることになっています。

たとえば2000年に結婚をして2016年に離婚をした夫婦の場合は、16年間分の夫の厚生年金の半分を、元妻が受給できます。

「なぜ基礎年金は年金分割の対象にならないの?」と思う人もいるでしょう。でもご心配なく!妻は妻で、婚姻期間中の基礎年金を自分の年金として受け取ることができ、その期間に関しての受給額は夫と同額です。

「年金分割は不公平」と感じてしまうトリックとは?

ところが、「年金分割は夫と妻で半分ずつと言いながら、ちっとも半分じゃない!不公平だわ」と憤慨する人がいます。しかし、それは誤解なのです。では、どうしてこのようなトリックのようなことが起こるのでしょうか?たとえば…

<夫> 大学を卒業して企業に勤め、32歳で結婚し、50歳で離婚。
<妻> 大学を卒業して2年間企業に勤め、24歳で結婚し、42歳で離婚。

このようなケースの場合、夫が企業に勤めてから32歳で結婚するまでに積み立てた年金は、夫は受け取っても妻は受け取れません。当然といえば当然なのですが、もしも夫婦の関係であれば「年金は全額を夫婦で使う」という感覚になるので、離婚をすると妻側が「損をした」と思ってしまいがちです。

夫が32歳から50歳までの期間はというと、この18年間分の年金は結婚している期間なので、当然、年金分割するべき年金です。そのため、離婚によって夫は厚生年金の半分を妻に分け、自分の基礎年金は自分個人の年金としてそのまま受け取ります。

独身時代の受給額の差が、夫婦の受取額の差を生む

では、妻の年金はどうなるのでしょうか?妻は独身時代に2年間企業に勤めているので、2年間積み立てたぶんの年金を受け取れます。さらに離婚する前の婚姻期間である18年間は「第3号被保険者」として扱われているので、年金分割による18年間分の基礎年金を受け取ることができます。さらに先ほどお話しした「夫の厚生年金の半分」を受け取れます。

ただし、この金額をすべて足しても、夫の年収がよほど多くない限り離婚後の生活を十分に営めるほどの金額には達しません。女性は独身時代に厚生年金を積み立てた期間が男性より短く、収入も男性より少なかった人が多いため、年金分割をしても離婚した後に受け取れる年金額が、どうしても夫より少なくなってしまうのです。それで「夫婦で半分に年金分割するはずだったのに、おかしい!」という不満につながってしまうのでしょう。

年金の受取額に不満をもつ、Aさんの場合

Aさんは50歳で夫と離婚。「年金分割によって、妻も年金の半分をもらえるようになった」と聞いて、思い切って離婚を決めたものの、年金分割をしても受け取れる年金額が8万円ほどしかないことを知って愕然としました。

もともとAさんは両親から「女性は結婚をして家庭を守るのが幸せ」と教えられてきたので、独身時代は知り合いのお店を少し手伝った程度で、あとはお茶やお花・料理などの習い事に精を出していました。

ところが結婚相手はなかなか見つからず、35歳でようやく結婚。15年間の結婚生活の末、残念ながら離婚に至ってしまいました。離婚の原因は夫の不倫だったため、200万円の慰謝料は受け取りましたが、財産分与はほとんどなし。離婚後に仕事をしようにも、50歳で何の経験もないAさんを雇ってくれる会社はなく、介護の資格を取ってデイサービスに勤務しました。現在は毎月16万円の収入を得ています。

独身時代に正社員として働いていなかったことが、仇になったAさん

Aさんは独身時代、正社員として働いてなかったため、国民年金を払い続けていました。そのため、離婚する前の婚姻中に第3号被保険者だった期間を含めると、65歳以降は国民年金を満額受け取れますが、長い独身時代の厚生年金部分はまったくありません。夫も決して高収入ではなかったので、婚姻期間中の厚生年金の半分を年金分割により離婚後にもらっても、大きな額にはならなかったのです。

持ち家のないAさんは離婚した後、毎月の家賃と生活費に追われ、元夫からもらった慰謝料を少しずつ切り崩しながら生活しています。「このままでは老後に向けての貯蓄など、まったくできない。将来は老後破産が待っているだけ!年金分割があっても、生活保護とあまり変わらない受給額では、どうしようもない」と、肩を落とすAさんでした。

離婚後の老後を年金分割の金額だけで暮らせる人は少ない

たとえ夫婦で年金を受け取っていても、実際には足りない人が多い

「以前は離婚をすると妻は年金を受け取れなかったけれど、今は年金分割制度で半分も支給されるから安心」と思っている人がいます。たしかに、何ももらえない昔に比べれば、離婚した女性の老後は楽になったかもしれません。しかし年金分割による年金額で、本当に離婚した後の生活を営んでいけるのでしょうか?

たとえば離婚せずに夫婦のままでいたら、年金分割せずに受給したはずの年金が24万円だったとしましょう。夫婦で受給している場合は、食費や水道光熱費などは共通の事柄になるため、少ない受給額でも何とかやっていける可能性があります。でもそれはあくまで“細々と”という意味で、実際には年金だけでは足りず、退職金や貯金を切り崩しながら暮らしている人が目立ちます。

”年金分割”があっても、決して老後が安心なわけではない

では、離婚によって夫婦が年金分割をした場合はどうなるのでしょうか?24万円を2で割っても12万円ですが、年金分割の対象になるのは24万円のうちの婚姻期間分だけ。さらにそのうちの厚生年金部分だけなので、自分の名前で受給する基礎年金と合わせても10万円を大きく切ることもあるでしょう。こうして計算をしていくと、離婚した後に受取れる年金額は、もしかしたら生活保護とあまり変わらない金額になる可能性が十分にあります。

ただし、生活保護者の場合は水道光熱費や医療費が無料で、住む場所も補償されますが、年金受給者はすべてを自分でまかなわなくてはなりません。これらをもろもろ合わせて考えると、「年金分割があるから離婚しても老後は安心」というようなことはまったくない、ということがわかるかと思います。

離婚後の年金分割の割合が”絶対に半分ずつ”なのは、専業主婦だけ

年金分割には、「合意分割」と「3号分割」がある

年金分割は、どの夫婦でも半分ずつになるかというと、そういうわけではありません。年金分割には「合意分割」「3号分割」という2つの制度があり、自動的に2分の1ずつ分割になるのは、後者の「3号分割」の場合です。

3号分割とは、専業主婦などの第3号被保険者が、婚姻期間の相手の年金を自動的に50%に分割してもらえるというもの。つまり専業主婦の場合は、心配をしなくても離婚による年金分割の割合は自動的に2分の1になるということです。

かたや「合意分割」とは、相手と話し合って按分(あんぶん)割合を決めるというもので、専業主婦以外の人はこの方法で妻の割合を50%~30%の範囲で協議します。

自営業の夫と別れても、年金分割はできる?

年金分割の対象となるのは、年金のうちの厚生年金部分だけなので、夫が国民年金に入っている場合は年金分割の対象になりません。妻が第3号被保険者の場合は、婚姻期間の年金額を基礎年金として受け取ることができます。

しかし、国民年金の場合は満額でも受給額が6万円台(2016年度は満額で月65,008円)なので、年金分割しても生活保護と同程度かそれより低い金額しか受け取れません。それだけでは、とても離婚した後の老後は人並みの生活を送れないでしょう。

ただし、それは夫も同じことです。国民年金だけでは老後に生活できないと見込んで、「小規模事業共済」や生保の「年金積立」などに夫が入っていた場合は、離婚の際に財産分与の対象となりますので、チェックしておく必要があります。

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