離婚時に退職金や年金額を財産分与でどれくらい貰える?取り分を計算しよう!

札束と計算機とメモ帳とペン

離婚後「どのように財産分与をすべきか」退職金の受け取り方や、年金受給の仕方が分からず途方に暮れる方がいます。しかし、離婚をした場合の財産や退職金、年金の分け方は難しくありません。

本記事では、離婚した場合どのように財産分与をすれば良いのか、詳しく説明します。また退職金や年金の申請方法・受け取り方についても合わせて解説をします。

みなさんも、離婚後「お金の問題」で困らないよう、今回紹介する流れで手続きを進めてみてください。

離婚時に退職金や年金額を財産分与でどれくらい貰える?

離婚後の財産は原則、夫と妻で折半をする

原則、夫婦が築いた財産は「夫婦のもの」であり、たとえ稼いだのが男性の側だとしても、夫婦が平等に財産を分けるようにします。

サラリーマンとして働く者(既婚者)の生活は、妻によって成り立っています。会社に出ている間、妻は家事などで夫や家族を支えているのです。こうした家族の強力があって、はじめて所得や夫婦共有の財産が生まれます。

こうした背景もあり(離婚では)誰が稼いだのか、男性・女性などの性別に関係なく、夫婦の財産は夫婦で折半をするのが一般的です。

夫婦の財産には、収入のほかにも預貯金、不動産、生命保険、有価証券などが該当します。まずは、夫婦がどのような財産を持っているのかリストアップしてみましょう。

財産に含まれるもの

預貯金、不動産、生命保険、自動車、有価証券(株式・債権)、年金、退職金、債務(マイナスの財産)など

ただし、すべての離婚で財産が均等に分けられる訳ではありません。

例えば、特殊な技術や能力で収入を得ている場合(例:医師やスポーツ選手、大手企業の経営者など)は、夫婦の協力で得た収入ではないため、半々ではなく、やや稼ぎ手に多く財産が移る可能性もあります。

なお財産分与の支払い方は、一括払い、分割払い、現物払いなどの方法があります。取り決めた内容は、公正証書などの文書に残しておいてください。

借金も財産として「折半の対象」になるので注意しよう!

財産はプラスのものに限りません。実は夫婦が抱えていた借金(ローン)なども共通の財産として分与されます。例えば、住宅ローンを払っている場合は、債務もそれぞれが折半する形となるので注意が必要です。

ただし、夫がギャンブルなどで多額の借金を作っていた場合は、夫婦の共有財産とはみなされず、借金をした本人が負担(返済)の義務を負います。

もし、収入や預貯金よりも債務の金額が大きい場合は、財産放棄などの方法で「返済をしない」手続きを取る必要があります。借金の問題を抱えている方は、離婚や財産問題に詳しい弁護士に相談をしましょう。

離婚で夫の退職金を妻はいくらもらう権利があるのか?

離婚の前に退職金を受け取っていた場合、夫婦の財産として均等に分けるのが一般的です。

また、離婚後に支払われる退職金については、「退職金=給料の後払い」として考えられます。このため退職金は「財産分与の対象」となる可能性があります。

しかし、退職金の財産分与に納得できない男性(または女性)は多いでしょう。退職金を財産分与にするかどうかは、厳格な決まりはなく、夫婦間で自由に決めることができます。

ただ、夫婦間で財産分与の方法で「意見が一致」しない場合には、民事調停や裁判で争うことになります。

退職金の分与で争う時には弁護士を味方につけよう

民事を含め、法廷で争う場合には、素人で手続きをするのでは無く、必ず信頼できる弁護士に相談し、調停(または裁判)の手続きを進めましょう。

弁護士に相談をすれば、相手が支払いに応じない場合もひるむことなく、有利な条件で(財産分与ができるよう)支えてくれるので安心です。

退職金が争点になる場合、離婚後10年以内であること。また、今後退職金が支払われる可能性が高い場合には、夫の退職金を妻が請求する権利があります。

離婚時に妻が受け取れる退職金の計算方法

妻がいくら退職金を受け取れるのか、シミュレーションをしてみましょう。例えば、退職金が1,800万円で勤続年数が30年間、婚姻関係が20年あったとします。この場合、妻が請求できる退職金は以下の計算式で求められます。

妻が受け取れる夫の退職金

1,800万円 × 3分の2=1,200万円 ⇒ これを夫婦で折半するので「600万円」

ここで妻が請求できる金額は、1,200万円の半分なので「600万円」になります。みなさんも婚姻期間と勤続年数から、受け取れる退職金を計算してみましょう。

離婚後の年金受け取りには年金分割制度が適用される

平成16年から、年金分割制度が導入され「離婚後、これまでの納付実績に基づき、年金の一部が分割できる」ようになりました。

ただし、分割できる年金には制限があります。年金分割制度が適用されるのは、厚生年金や共済年金の部分に限られ、国民年金や厚生年金基金、国民年金基金は分割対象ではありません。

離婚後の年金が分割できるのは、厚生年金や共済年金だけ

厚生年金や共済年金 離婚後、分割受取できる
国民年金、厚生年金基金、国民年金基金 離婚後、分割受取できない

また、厚生年金や共済年金についても、保険料の納付済期間や免除期間、合算対象期間が25年を下回る場合は、年金受給資格が無く、離婚後の分割もできないので注意しましょう。

ちなみに、年金分割制度は平成19年4月1日以降に離婚された方と、平成20年4月1日以降に離婚された方では、分割の条件が異なります。以下に「年金分割制度」それぞれの違いをまとめてみました。

離婚時期による年金分割制度の違い

区分/離婚をした時期 平成19年4月1日以降に離婚 平成20年4月1日以降に離婚
分割できる割合 2分の1 2分の1
対象者 第三号被保険者、第一号被保険者、第二号被保険者 平成20年4月1日以降第三号被保険者であった方が申請可
夫婦の合意 必要
※話し合いが決裂している場合は、裁判によって合意割合を決定する。
不要
分割対象となる期間 婚姻期間 平成20年4月1日以降第三号被保険者であった期間が対象
請求の期限 離婚の翌日から2年まで 離婚の翌日から2年まで
分割の区分 合意分割 3号分割

ちなみに表中にある第三号被保険者とは「第二号被保険者に扶養されている配偶者」の方を指します。第一号被保険者、第二号被保険者についてもまとめておきます。

保険の区分と対象者

保険区分 対象者
第三号被保険者 第二号被保険者に扶養されている配偶者
第二号被保険者 厚生年金保険の被保険者と共済組合の組合員
第一号被保険者 自営業・無職・学生等、第二号・第三号保険者でない人

このように、厚生年金保険の被保険者、共済組合の組合員は年金分割制度が申請できます。

また、平成20年4月1日以降に離婚した方は「第三号被保険者、第一号被保険者、第二号被保険者」が申請可能、平成19年4月1日以降に離婚した方は「第三号被保険者」のみ申請できます。

年金分割は、日本年金機構に標準報酬改定請求書を提出し手続きを行います。なお請求の期間は、離婚後二年間がタイムリミットです。この時期を過ぎると、分割請求できないので気をつけてください。

年金の仕組みと被保険者の区分

国民年金とは、国内に住む20歳〜60歳までの方すべてが納める年金のことです。これに対し、厚生年金は会社員や公務員が国に納める年金で、老後は国民年金にプラスして厚生年金が受け取れる仕組みです。

また企業年金という仕組みがあり、各企業が独自に運営する年金制度で、加入する社員は定年後、企業年金の支給も受けられます。

退職金を早期に受け取り生活費として使い切った場合の財産分与

離婚よりも前に、退職金を早期で受け取り、すべて生活費として使い切ってしまった場合には「財産分与の対象外」となる可能性が高いです(※ 詳しくは弁護士などに尋ねてみてください)。

このほか、会社の経営状況が思わしくなく退職金が出るか分からないような場合や定年退職までの期間が長く、退職金の支給がはっきりしない場合には「財産分与の対象外」となる可能性があります。

元夫婦とは言え、必ず退職金が受け取れる訳ではないので注意しましょう。

財産分与の準備と心構え

離婚で「どのように財産を分けるのか」は、職業の区分によって異なります。

例えばサラリーマンの場合は源泉徴収票、自営業者の方は確定申告書を元に収入を割り出します。また預貯金については、すべての預金通帳を出して「合計金額」を求めてください。

土地や建物などの不動産は、不動産業者に査定をしてもらいます。このほか、住宅ローンや、その他債務については金融機関から送付される「返済予定表」をもとに計算しましょう。

そして、プラスの財産から、マイナスの財産(ローンなど)を差し引き、財産分与の対象となる「財産」を求めるようにします。

財産分与について調停、裁判を行う場合

財産分与の話し合いは原則自由ですが、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所で調停の申し立てを行います。

家庭裁判所でも調停が不成立(=話し合いがまとまらない)場合は、離婚裁判での解決を目指します。調停や裁判で財産分与が決まったら、続けて「どのように分与をするのか」話し合いで決定をします。

なお、財産分与の内容は必ず、公正証書にまとめておきましょう。公的な文面を残しておけば、後々財産の支払いで揉めることがありません。

離婚時に必ず知っておきたい財産の区分

親や親族から相続した資産は「特有資産」と言い、財産分与の対象外となります。また本記事の前半で説明した通り、配偶者が抱えた借金も特有財産となり(住宅ローンなどは除く)、離婚後相手に相続する義務は生じません。

ここで、財産分与外となる「特有財産の種類」をまとめておきます。

財産分与外となる「特有財産の種類」

相続した財産 親や親族から相続した現金・預貯金、株、債権、不動産、骨董品、美術品、自動車、借金
独身時に手に入れた財産 現金・預貯金 、家電・家財道具、年金、不動産 ・生命保険、株・債権、自動車 ・将来の退職金、借金
個人で築いた財産 独身時代に行った投資の配当金 、独身時代の財産で行った投資の配当金 、趣味やギャンブルでつくった借金
自分しか使わない家財 男女の区分がある服飾品、洋服、靴、携帯電話、スマートフォンなど

ただし、家財についても高額な宝飾品やブランド品は、売って資産になることから「財産分与の対象」になる可能性が高いです。

財産を資料として書き出す場合、何が財産で何が特有財産なのか、区別してから(夫婦の財産を)内容をまとめてください。

退職金の財産分与、裁判の判例と差し押さえの流れ

家庭裁判所や一裁判の判例では、夫婦は「平等に財産を2分の1ずつ分ける」のが原則であり、収入のない専業主婦に対しても「共有財産の2分の1が受け取れる」というのが家庭裁判所の考えです。

また、裁判で財産分与について解決したにも関わらず、夫が退職金の財産分与に応じない場合や子供の養育費が支払われない場合には、強制執行(=差し押さえ)をするのが効果的です。

差し押さえにする場合、相手名義の財産(給与や預金の口座)を対象に差し押さえができます。ただし、相手が退社した場合の給与債権は差押ができません。また預貯金の全額を差し押さえできるのでは無く、給与全体から税金や保険料、通勤手当などを差し引いた「手取り4分の1」程度が、差し押さえの対象になります。

強制執行を行う場合には、夫婦の話し合いについてまとめた公正証書、裁判時に受けたときの判決書、調停の調停証書を準備し、裁判所で「債権差押申立書」という書類を作成してください。

このほか強制執行には、以下の書類が必要になります。

強制執行に必要な書類

当事者目録/請求債権目録/差押債権目録/申立書の目録の写し/執行文/送達証明書/宛名の書かれた封筒/相手の勤務先の商業登記簿謄本か資格証明書(給与差押に必要)/対象銀行の商業登記簿謄本、または資格証明書(預貯金差押に必要)/必要があれば相手の住民票(住所変更がわかるもの)

申し立てには手数料が4,000円、切手代が2,500円程度掛かりますが、相手が支払いをしない場合のトラブルを回避し、確実に財産が押さえられるというメリットがあります。

資産調査を行い「相手に財産がある」ことが明らかであれば、強制執行で財産や慰謝料、養育費などを払ってもらいましょう。

へそくりも共有財産になる

意外かもしれませんが「へそくり」も、夫婦の共有財産になります。夫・妻のどちらかが貯めたへそくりであっても、家計から捻出された場合は、原則夫婦の共有財産として分与対象となります。しかし、妻または夫が「へそくりの存在を隠した」場合、自ら申告しないかぎり財産分与の請求は難しくなります。

ただ、離婚後へそくりの存在を知った場合は、財産分与を請求することができます。へそくりの証拠をつかんだ方は「分与できる」ことを覚えておきましょう。

離婚の財産分与や慰謝料が課税対象になるケース

財産分与や、受け取った慰謝料は原則「非課税」です。ただし、世間の平均よりも高い慰謝料が支払われる場合や税金逃れの離婚と見なされた場合には、課税対象になる可能性があります。

慰謝料や財産分与を不動産で支払った場合にも注意が必要です。不動産を譲る側には、不動産の「譲渡所得税」が課税される上に、受け取った側にも不動産取得税が課税されます。このほか、不動産の名義変更にも登録免許税がかかり、不動産を所有する限り、固定資産税も発生します。

不動産には一定の「控除」もありますが、場合によっては大きな税の負担があるので注意しましょう。そして、財産分与をする場合は、不動産ではなく不動産を一旦売って現金にして分与するか、預貯金を夫婦で分与するのが無難な方法です。

まとめ|離婚をしても夫婦の財産は均等に分けられる

離婚をしても、夫婦の財産である年金や預貯金、不動産、その他財産はすべて、均等に分けられる仕組みです。

専業主婦の方も、相手が稼いだ収入は「二人の共有財産」になります。慰謝料請求や離婚請求をする際には、必ず覚えておいてください。

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