離婚時に貯金を渡したくない!財産を隠すことは罪になる?

財産分与や慰謝料の支払い方法

離婚の際は二人の共有財産を分割しますが、財産分与を有利に進めるためには、かなりの努力が必要です。なぜなら、家の中の財産を自分がはっきり把握していない場合、相手からできるだけ財産を渡さないで済む方法を画策されてしまうことがあるからです。

夫婦間で財産隠しをしても、罪には問われない!

自分名義の財産を渡したくない相手がよくやる手口が、“財産隠し”です。何だかとっても物騒な話ですが、これは実は刑法上の犯罪に問われません。「財産隠しをしても罪に問われないなんて、信じられない!立派な犯罪なのに」と思うかもしれませんが、残念ながら日本では、離婚の際に夫婦間で財産隠しをしても犯罪行為とはみなされないのです。

それはなぜかというと、親族には「親族相盗例」という刑法上の規定があり、親族間で発生した一部の犯罪行為(または未遂行為)については刑罰を免除することになっているからです。財産を譲る側の相手としては、「隠しても罪に問われなければ、やらない手はない」と思ってしまうのは当然かもしれません。

民事上の損害賠償請求はできるが、証拠が必要

財産隠しをされてしまった側にできることがあるとすると、民事上の損害賠償請求です。「財産分与が適正な形で行われなかった」ということで、財産分与のやり直しを求める請求をすることはできますが、これには証拠が必要です。もしも証拠として出せるものがあるのであれば、頑張ってみる価値はあるかもしれません。

ただし、財産分与のやり直しを求める場合は、離婚成立から2年以内に行わないと時効になってしまいます。このように、一度決まってしまった財産分与を覆すのはとても大変なことなので、とにかく相手に離婚を告げる前に、できる限り情報や証拠を集めて対処しておくことが大切なのです。

逆に隠される可能性がある場合は相手名義の財産を明らかにしておく

保険や株式・財形貯蓄・退職金などは見落としやすい

相手に離婚を切り出す前に「離婚準備ノート」を作り、財産分与の対象となる可能性のあるものをすべて書き出しましょう。

離婚の際に財産分与の対象となるものには、「現金」「預貯金」「退職金」「年金」「住宅」「土地などの不動産」「自動車」「貴金属や装飾品」「有価証券(株式・国債など)」「保険(生命保険・養老保険・教育保険など)」「美術品や骨董品」「家具」「電化製品」「会員権(ゴルフなど)」「婚姻費用(別居していた場合)」「第三者名義または法人名義の財産」「営業用の財産(夫婦で事業をしていた場合)」などがあります。

家や車といった一目瞭然に財産だとわかるものは、相手としても財産分与の対象とすることは避けられません。しかし、共有の財産でありながら夫(妻)の名義になったまま、今どうなっているのかわからなくなっている財産は、隠されてしまう可能性が非常に高いでしょう。たとえば下記のようなものは財産隠しをされる可能性がかなり高く、注意が必要です。

  • 給与やボーナスを使って運用している株式や国債
  • 掛け捨てでない生命保険・養老保険・教育保険・年金積立などの有価証券
  • 会社の財形貯蓄
  • 個人事業主であれば小規模事業共済の積立金
  • ゴルフなどの会員権
  • 銀行の貸金庫に預けている金や貴金属など

ローンなどの借り入れ状況を把握する

財産には上にあげたようなプラスの財産だけでなく、「住宅ローン」や「自動車ローン」「消費者金融からの借り入れ」など、マイナスの財産もあります。これをしっかりと把握することも、財産分与の話し合いをする前に絶対にやっておくべきことです。

財産分与の際に、この残債が残った状態で譲り受けてしまうと、大変なことになります。「車を譲り受けたと思っていたら、300万円の車の残債が200万円も残っていて、自分が払わされることになった」というような例は、けっして少なくありません。

有価証券の満期日を確認する

子どもの教育保険や年金積立などの有価証券は、必ず満期日を確認し、満期になっていない場合は今後誰が支払うのかを明確にする必要があります。ただし、財産を渡す側が「自分が支払う」と約束しても、実際には最後まで支払い続けないケースも多く、やはり解約して現金にしてから財産分与を行うのが一番賢明な方法といえます。

離婚の財産分与問題に強い弁護士に相談する

自分で解決するのが難しい場合は、弁護士の後押しが必要

夫婦の共有財産を調べる場合は、「必ず持っているはずだけれど、どうやって調べたら良いかわからない」という人もかなり多いでしょう。財産隠しをするような相手の場合、問いただしたところで「持っている」というわけはなく、証拠といってもなかなか難しいかもしれません。

そのような場合には、やはり離婚の財産分与問題に強い弁護士に相談するのが、ベストの方法です。弁護士に依頼をするとそれなりの費用はかかってしまいますが、これまでの経験から一番良いと思われる選択を共に考え、トラブルを最小限に抑えてより良い解決の道へと導いてくれるでしょう。

弁護士に依頼することで、相手の出方が変わることは多い

弁護士に相談をしたからといって、必ず自分の思い通りの結果が得られるわけではありません。たとえば、「夫が絶対に自分名義の年金積立をしているはずだから、何とかしてこれを財産分与の対象にしたい」と思っても、それが叶うとは限りません。

弁護士には「弁護士照会(23条照会)」という特別の権利があり、相手の勤務先や金融機関・企業などに対して紹介をかけられることになっています。しかし、実際には紹介先がこれに応じない場合も多く、逆に離婚相手から弁護士が訴訟を起こされてしまうリスクもあります。離婚に関して法的な拘束力を持っている欧米などに、日本の離婚制度はまだ追いついていないのが現状なのです。

だからといって、自分自身で何とかしようと思っても、それは非常に厳しいものがあるでしょう。弁護士に依頼をした場合、たとえ財産分与で相手のグレーな部分を突き止められなくても、慰謝料や養育費などを多く取ることができる可能性はあります。弁護士が間に立つことで、相手も下手なことはできなくなり、「この辺で手を打とうか」という妥協案を提示してくる場合も多々あります。

相手が不当な言い分を主張してきた際にも、弁護士は強い味方に

離婚相手によっては、何とか自分名義の財産を渡したくないと思うあまりに、不当な言い分をでっちあげて主張してくるようなケースもあります。たとえば、キッチンの洗い物が残っている画像を撮影して、妻がいかに家事をせずに夫婦としての責任を果たしていないかを主張し、妻の財産分与を少なくしようとするような場合です。

これは非常に悪質なケースではありますが、財産分与問題が調停や裁判に進んだ際には、醜い証拠合戦のようなことも実際に行われています。このようなもつれ合いに進む可能性がある場合にも、弁護士は強い味方になってくれるでしょう。

弁護士選びは、くれぐれも慎重に

弁護士に頼むのが良いとはいっても、自分と相性の合わない弁護士に頼んでしまうと、かえって心労が重なってしまうこともあります。何かと意見が衝突してしまったり、納得できないままに話し合いが進んでしまったりすることも、無いとは言えません。

弁護士を選ぶ際は、当サイトから離婚の財産分与問題に強い弁護士をピックアップし、まずは法律相談からスタートしてみましょう。いくつかの法律事務所を訪ねてみて、一番自分と相性の良い弁護士に決めるのも良いかと思います。


財産分与は、人生の一大事。それだけに、弁護士との信頼関係はとても大切です。相談者が傷ついているときには優しく気づかい、問題を相談者自身で解決できそうなときには裏方に回ってくれるような、誠実な弁護士を選ぶことをお勧めします。もしメンタル面に絶対の自信があれば、実力本位で選ぶのもひとつの方法でしょう。

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