財産分与のトラブルは、こうして起こる【隠し財産や一方的な財産処分に要注意!】

慰謝料と財産分与トラブル

「たしか年金積立の保険があったはずなのに、いつの間にか証券がなくなっている!」そんな財産隠し事件が、離婚の話し合いの前に起こることは、けっして珍しくありません。油断は禁物!家庭にどんな財産があるのかは、離婚の話を切り出す前に絶対に把握しておく必要があります。

財産分与のトラブルは、どうして起こる?

財産隠しなどで、トラブルになることも多い

離婚をする際には、慰謝料や財産分与・養育費などを決める必要があります。その中でも財産分与に関しては、「財産を隠されてしまう」「財産にローンが残っている」などの問題で、トラブルになりやすい可能性があります。

たとえば夫が財産のほとんどを管理していて、妻には何があるかわからない場合などは、離婚の話し合いをする前に“財産隠し”をされてしまう可能性が高いので、注意しましょう。

財産分与の対象となるものは、いったい何?

細かい財産の項目も、見落とさないよう注意を

財産というと「貯金」や「家」「車」などがすぐに思い浮かびますが、実はまだまだたくさんあります。「貴金属」や「生命保険」「家具」などの細かい財産は、離婚前の忙しさに紛れてつい見落としてしまうこともあるので、注意しましょう。

家具などは、住宅を譲り受けた側が使い続けるケースも多いのですが、家を売って引っ越す場合はきっちりと決めておく必要があります。何も決めずに、引っ越しの間際になって「これは自分が持って行く」「いいえ、私が必要だから」と揉めるケースもあり、気を付ける必要があります。

財産分与の対象となるのは、主に次のような内容です。

プラスの財産
  • 現金
  • 預貯金
  • 退職金
  • 年金
  • 住宅
  • 土地などの不動産
  • 自動車
  • 貴金属や装飾品
  • 有価証券(株式・国債など)
  • 保険(生命保険・養老保険・教育保険など)
  • 美術品や骨董品
  • 家具
  • 電化製品
  • 会員権(ゴルフなど)
  • 婚姻費用(別居していた場合)
  • 第三者名義または法人名義の財産
  • 営業用の財産(夫婦で事業をしていた場合) など
マイナスの財産
  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • 消費者金融からの借り入れ など

マイナスの資産も、しっかりチェック

ここで気を付けたいのは、預貯金や株式といったプラスの財産だけでなく、住宅ローンや自動車ローンなどのマイナスの財産も、財産のひとつであるという点です。「主人に預貯金や退職金はすべてあげたので、私は住宅をもらった」といっても、実は住宅にはローンが残っていて、残債を自分が支払わなければならなかったという例もあります。これは良くありがちなケースといえます。

教育保険なども、「満期保険金100万円を子どもの学費にあてられる」と思っていても、実は毎月の支払いを自分がしなければならなかったというケースも少なくありません。ローンの支払いが終わっていない財産や、満期になっていない保険金には、くれぐれも注意しましょう。

まずは二人の共有財産をリストアップ!

後から「あれはどこにいったの?」とトラブルにならないように、まずは二人の共有財産をすべてリストアップしましょう。その上で、誰がもらうかをひとつずつ確認するのが確実な方法です。婚姻中に築いた共有財産は、“半分ずつ”にするのが一般的です。

ここで専業主婦の人の場合、「今までの財産は、夫の収入で築いたものだから、自分はもらえない」あるいは「もらったとしてもわずかだろう」と考える人がいるのですが、それは違います。家事や育児を放棄していたなら別ですが、夫が働いている間に懸命に家事や育児をしてきた妻には、それ相応の財産分与を受ける権利があります。

もちろん、どちらか一方の特別な努力で成された財産などは考慮すべきですが、基本は2分の1ずつと考えて問題ありません。

【財産分与トラブル1】住宅ローンが残った家を譲り受けてしまった、Aさんの場合

「自宅をほしい」と夫に頼み、口約束をして離婚

Aさんは元専業主婦。子どもはいません。浮気性の夫に愛想を尽かして離婚をする際に、「私は今まで専業主婦だったので、これから働いたとしても、家賃まではとても払い切れない。他には何も要らないから、今あるこの家だけは私に譲ってほしい」と夫に頼みました。

夫はサラリーマンで、年収は800万円ほどあり、新卒で入社してからずっと勤めているのでそれなりの退職金も出る予定でした。ところがAさんは、「夫の収入は、夫が働いて稼いだお金だから、私がもらうわけにはいかない。でも、せめて家だけでは残してもらわないと、これから生活していけない」と思ってしまったのです。

夫が住宅ローンの支払いをストップ!家は競売に

夫はAさんの要求をのみ、「家はおまえに渡す。ローンは自分が支払う」と約束しました。そして離婚。Aさんは変わらず家に住むことができたのですが、自宅の名義が夫のままになっていることには気づかず、離婚協議書を作成することも思いつかなかったのです。

すると1年後、夫から突然電話が入り、「事情があってローンを払えなくなったので、家が競売にかけられることになった。悪いが家から出て行ってほしい」とAさんは言われました。「とんでもない、そんなことをしたらこれから先、私は生きていけません!ローンを払ってください。あなたには十分な収入があるでしょう?」とAさんが泣きながら訴えると、夫は「再婚することになった。もうこれ以上、おまえのためにお金を使うことはできない」と、冷酷な返事をして電話を切ってしまったのです。

はじめからローンを払う気のなかった元夫

そのときはじめてAさんは、夫が最初から住宅ローンを払い続ける気が無かったことに、気づきました。口約束で何も証拠はなく、しかも名義が元夫のものであるとすれば、Aさんが主張できるものは何もありません。Aさんは、ただ単に元夫の家に住み続けていただけ。そして家の所有者である元夫がローンを支払わないために、家が競売にかけられただけ、という結果になってしまったのです。

その後Aさんは、泣く泣く家を出て、1間のアパートに暮らしています。介護の仕事に就きましたが、もともと専業主婦だったAさんにとって仕事はきつく、「これから先、年老いたときのことを考えると、もう生活保護しかないかもしれない」と思うAさんでした。

【財産分与トラブル2】夫に三下り半を突き付け、財産隠しをされたBさんの場合

離婚を切り出したとたんに、財産隠しを考え始めた夫

Bさんは、モラハラを繰り返す夫にほとほと疲れ果て、ある日爆発をしてしまいました。「もうあなたとは一緒に暮らせない!離婚してちょうだい。財産の半分は、私がもらいます」と、夫の前で宣言してしまったのです。

それに対して夫は、「わかった、じゃあ離婚しよう」と言った切り、なぜか今までのようなモラハラをしなくなりました。ところが、それが夫の策略であったことには、まったく気づかないBさんでした。

Bさんから離婚を切り出された夫は、まずモラハラの“証拠隠し”と、“財産隠し”を考え始めたのです。妻からモラハラを理由に慰謝料を請求されては大変だし、処分できる財産はすべて処分して、わからないように持っていようと画策しました。

そんなこととは知らないBさんは、「モラハラをしなくなったのなら、しばらく様子を見てもいいかも」と、のんびり構えてしまいました。その間に夫は自分名義の教育保険を解約し、妻が受取人になっている生命保険も解約し、株も売り払い、預金通帳や年金積立の証書は会社のデスクに隠しました。家と家財と車以外の財産は、すべて妻に見つからないよう隠してしまったのです。

慰謝料や保険を請求できず、自分の不用意さを心から反省したBさん

そして夫はすべて段取りを整えた上で、「そろそろ離婚の話し合いをしようか」とBさんに切り出しました。Bさんは、夫の態度に何か違和感を感じながらも、財産分与として慰謝料と子どもの養育費、教育ローンの保険金、年金積立の保険金を請求しました。ところが夫は、「教育ローンも年金積み立てもとっくに解約した」と言い張ります。

あわてたBさんは、弁護士に相談しましたが、夫名義になっている保険や貯蓄は、民事の段階で調べるのは難しいとのこと。また、慰謝料請求に関しても、証拠が無ければ通りづらいと言われてしまいました。

あらためて夫のしたたかさを痛感したBさん。今は財産分与で夫と話し合いがつかず、調停中です。「不用意に離婚を切り出した自分が、いかに世間知らずだったかを思い知らされた」と、反省の日々を送るBさんでした。

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