離婚をすると子供の相続権はどうなる?注意が必要な事例も紹介

子どもの相続

元夫が死亡し、子どもに借金の督促がきたAさんの事例

金銭トラブルのある夫と離婚後、平和に暮らしてきたAさん

Aさんの元夫は金遣いが荒く、あちこちに借金を作っては踏み倒す日々を送っていました。耐えかねたAさんは、裁判を起こして離婚が成立。その後、元夫から連絡が入ってもAさんは無視し続け、やがて元夫はどこへともなく姿を消してしまいました。

その後、Aさんは独身時代にやっていた看護婦の仕事を再開し、小学生の子どもと2人で平和な日々を送っていました。ところが、ある日突然元夫の債権者から、子ども宛てに借金の督促状が来てしまったのです!

元夫が借金を残して他界。突然子どもに請求書が送りつけられる

Aさんはあわてて債権者に連絡をし、「もう別れた夫ですので、こちらには何の関係もありません」と伝えたところ、「ご主人が亡くなられたので、相続人であるご子息に支払いを請求させていただきました」との返事。

「え!そ、そんな筈は…」とAさんはうろたえました。「あの人は、死んでまでも私たちに迷惑をかけようとするの!?」と、あまりに突然の話に怒りのやり場もなく、Aさんは悩みに悩んで弁護士事務所を訪れました。弁護士に相談したところ、相続放棄の手続きをすれば、何とか借金の肩代わりはしないで済むとのこと。

ホッと胸をなでおろしたAさんでしたが、「まさか離婚した後でこんな思いをするとは、夢にも思わなかった」と、あらためて恐怖を感じました。夫婦の関係は切れても、親子の関係は切れないということですね。

借金などの負の財産は、相続放棄を

相続放棄の手続きをすれば、借金を肩代わりする必要はない

Aさんのように、ある日突然別れた相手の借金が子どもに請求されるケースは、けっして少なくありません。金銭トラブルが原因で離婚に至った人は、将来的にその危険性があることも、心に留めておいた方が良いでしょう。

もし万が一子どもに借金の請求がきた場合は、弁護士に相談をして、「相続放棄」の手続きをしましょう。「相続放棄ができるのは、被相続人が死亡してから3か月以内」と勘違いしている人もいるのですが、そうではなくて「被相続人の死亡を知ってから3か月以内」です。たとえ別れた夫の死後5年後に請求がきたとしても、死亡したことに気づいたのがそのときであれば、それから3か月後で良いのです。

もしも、別れた相手がまだ生きていたら?

相手が生きている間は相続が発生しないので、心配なし!

「相続放棄をすれば良いといっても、別れた相手はまだ生きていて、どんどん借金が膨らんでいる。生きているうちに子どもに請求が来たらと思うと、不安で仕方がない」と思い悩んでいる人もいるかもしれません。

でも、それは心配する必要はありません!別れた相手が生きている間は相続が発生しないので、相手に直接借金の請求がいきますし、亡くなったら財産を放棄すればよいだけです。きちんと手続きさえすれば、被害を被ることはないので、安心してください。

「借金の督促が来るのでは?」と不安に思う、Bさんの事例

ギャンブルにのめり込み、借金を重ねる夫と離婚したBさん

Bさんの夫はギャンブルにのめり込んでサラ金から借金をし続け、自宅には複数の業者から督促状が届く始末でした。そんな夫にBさんはほとほと愛想を尽かし、2人の子どもを連れて離婚をしました。養育費ももらえないような状況でしたが、「これでやっと平和な暮らしができる」と、Bさんは胸をなでおろしていました。

しかし、Bさんには一抹の不安がありました。それは、元夫の借金の請求が、子どもたちに来ないかということです。離婚後、元夫は姿を消したまま会うことはありませんでしたが、風の噂で「アルコール依存症になり、まともな生活ができなくなった」ということを聞いていたからです。

悪質なサラ金業者の罠にはまらないよう、十分に注意を

「もしもサラ金から督促状が来たらどうしよう!」と思うと、Bさんは不安で仕方なく、弁護士に相談をしました。「できれば私だけでなく、子どもたちと元夫との縁も切れないものでしょうか?」と相談するBさんに、弁護士はこう答えました。

「それはできません。親子の関係がもつれて縁を切るということはありますが、それは単なる親子間の約束で、法律上では不可能です。ただし、元のご主人が生きておられる間は、子どもさんに督促がくることはありませんので、ご安心ください。亡くなったことをお聞きになってから3か月以内に、家庭裁判所で子どもさんお二人の相続放棄を行えば大丈夫です」

まずは子どもたちに督促が来ないことがわかり、心から安堵するBさんでした。ただし、弁護士はまた、こんなこともBさんに伝えました。「サラ金業者の中には、悪質な手口で取り立てを行おうとするケースもあるので、十分注意してください」と。

業者としては、あの手この手で罠を仕掛け、取り立てをしようとすることもあるようでした。相続放棄をすれば支払い義務がないとはいえ、このことで業者と変に揉めることのないよう、心しておかなければと思うBさんでした。

思いがけないプラスの遺産が、舞い込むこともある

別れた親の死亡によって、家や貯蓄などを相続することに

別れた親の財産相続に関して、暗い話ばかりをしてしまいましたが、これとは真逆のケースももちろんあります。離婚後に離れ離れになった親の遺産が、親が死亡することで突然舞い込むこともあるのです。

たとえば離婚後に父親が自己所有の家に住み、ある程度の貯蓄を残して亡くなった場合、その資産は子どもが相続することになります。このとき、別れた親が再婚しなかった場合は、100%子どもが相続します。Bさんのように子どもが複数いる場合は、財産を人数分で均等に分けます。また、親が再婚していても子どもがいない場合は、現在の配偶者と子どもで半分ずつ相続します。親が再婚して子どもがいた場合は、現在の配偶者が半分、あとの半分を子ども全員で均等に分けます。

親に内縁関係の人がいた場合は、内縁関係には相続権がないので相続はしませんが、認知した子どもがいる場合は「実子2」対「内縁の子1」の割合で相続をします。

プラスの遺産とマイナスの遺産の、両方があるときは?

プラスからマイナスを差し引いて、マイナスならば相続放棄もできる

親の遺産を相続する場合、中には「不動産などのプラスの資産もあるが、借金もしていた」というような場合もあります。その際はプラスの資産からマイナスの資産を引いて、残りがプラスになった場合にのみ相続し、マイナスの資産の方が多ければ相続放棄を行えば問題ありません。

相続争いを避けるために、相続放棄をすることも

また、たとえプラスの資産がある場合でも、そこはずっと離れ離れになっていた親子のこと。親には親のその後の人生があって、そこで新たな人間関係も生まれていたはずです。再婚相手に「何でいまさら、まったく会ったことのない人に、資産を分けなければならないのか」と言われてしまうこともあるでしょう。相続争いに巻き込まれたくないということで、相続放棄をすることもあるかもしれません。

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