離婚調停での親権争いで子供の意見や意思は反映される?

ケンカする両親と娘

離婚調停で親権者を決める際、子ども自身の意見がどの程度影響を及ぼすのかを解説します。原則として、子どもの年齢に応じて意見が尊重されるようになります。平成25年からは「子どもの手続き代理人制度」が導入され、今まで以上に子どもを主体的に手続きに参加させようとする動きが強まっています。

離婚調停での親権争いで、子どもの意見はどう反映される?

離婚調停で親権者を決める際、もっとも重視されるのは“子どもの福祉”です。つまり、子どもが健全な環境の中で、心身ともに健康に幸せに育つことが何よりも大切だと考えられています。

具体的には、子どもの年齢・性別、子ども自身の気持ち、子どもの現在の生活状況、経済状況、親の健康状態、これまでの子育ての実績などが総合的に考慮されることになっています。

子ども自身の気持ちがどの程度反映されるのかは、年齢や精神発達の程度によって変わります。

離婚調停での親権者決定における子どもの意思の反映傾向
10歳まで 母親が親権者に選ばれることが多い
10歳以上 子どもの意見もある程度考慮しつつ、総合的に判断
15歳以上 子どもの意見を最大限尊重して親権者を決定する

10歳未満の幼い子どもにとって、自分の頭で重大な決断を下し、それを正確に伝えるというのは非常に難しい行為です。

父親と会っているときは「お父さんと住みたい」、母親と会っているときは「お母さんと住みたい」という風に、その時々で感情が揺れ動く可能性があります。

ただし10歳未満であっても、子どもの気持ちが考慮されるケースもあります。この辺りの判断は、ケース・バイ・ケースで慎重に行っているようです。

子どもの意見を聞くのは「家庭裁判所調査官」

子どもの意見を実際に聞くのは、「家庭裁判所調査官(以下、家裁調査官)」と呼ばれる専門家です。

家裁調査官は、離婚などの家事事件や少年事件について調査を行うのが仕事。
今回のケースでは、子どもとの面談や家庭訪問、学校・保育所の訪問などを行い子どもの生活状況などを詳しく調査します。

家裁調査官は、調査内容をもとに報告書を作成して裁判所に提出します。この報告書は、親権者の決定に大きな影響を及ぼすと言われています。

子どもの手続き代理人制度とは

子ども自身が離婚調停に参加

平成25年1月に施行された「家事事件手続法(旧・家事審判法)」では、子ども自身が離婚調停などの手続きに主体的に参加できるよう「子どもの手続き代理人制度」を導入しています。

親の離婚は、その子どもにとっても人生を大きく揺るがす重大な出来事。
これまでは意向調査を待っているだけの受動的な形でしか参加できませんでしたが、子どもが独立した個人としてもっと能動的に意見を述べる機会を設けるべきだという考えのもと、この制度が作られました。

たとえば、親権者の指定や面会交流など、子ども自身の利益に大きく関係する事項については「子どもの手続き代理人」を立てて積極的に参加できるようにしています。

「子どもの手続き代理人」には弁護士が選ばれる

子どもが離婚調停の中で理路整然と気持ちを述べるのはハードルが高いため、「子どもの手続き代理人」として弁護士を選任します。

子ども自身が「子どもの手続き代理人」の利用を申立てることもできますし、裁判官の職権で国選弁護人を選任することもあります(家事事件手続法第23条)。

ただし子どもが申立てる場合には、ある程度の年齢を重ねて思考能力が備わっていることが条件です。個人差はありますが、小学校高学年以上が想定されています。

「子どもの手続き代理人」は家裁調査官などと異なり、裁判所から独立した地位にある点が大きな特徴。離婚手続きの現状について自由に情報提供を行い、専門家としてアドバイスをすることもできます。

子どもは、代理人とのコミュニケーションを通して自分が置かれている状況をしっかりと理解した上で、自分の本音を述べることができます。

「子どもの手続き代理人」の費用は、通常の弁護士費用と同じく本人負担が原則。
しかし経済力のない子どもには支払えないことが多いため、代わりに両親が負担することになります。

離婚調停を行う際には、「子どもの手続き代理人」費用の負担割合についても、あらかじめ定めておくとよいでしょう。

離婚で親権を勝ち取るための基礎知識

実際に親権者となるのは、子どもの年齢に関係なく圧倒的に母親が多いです。
その理由は、これまで子育てしてきた実績が考慮される傾向にあるから。

父親が家族のために頑張って働いていたとしても、子どもの傍にいて世話をしていた時間が長い方が有利なのです。

しかしどんな場合においても母親が選ばれる訳ではありません。
母親が育児放棄や虐待をしている、病気で子育てできない、子ども自身が父親と暮らすことを強く望んでいるなどの事情あれば、父親が親権を勝ち取る可能性もあります。

親権者を決める際の判断基準

親権者を決める際には、子どもの意見だけでなく様々な要素が総合的に考慮されます。

離婚時点で子どもと同居しているか

離婚時点で子どもと同居している方が、親権者として有利になる可能性があります。子どもが安定的な生活を送っているのなら、なるべくそれを変えるべきでないという考えからです。これを「事実状態保護の原則」と言います。

心身ともに健康であるか

身体だけでなく、精神状態も重視されます。精神的に不安定である、精神疾患を診断されているなどの場合には親権者として不利になる恐れがあります。

十分な経済力があるか

専業主婦だからと言って必ずしも不利ではなく、元夫からの財産分与・養育費・慰謝料、公的手当なども考慮されます。

これまで長期間にわたって子どもを育ててきた実績があるか

食事の準備、子どもが病気になった時の看病、学校・習い事の送迎、学校行事への参加などです。一緒に過ごしていた時間が長い方が、有利になる可能性があります。

子どもの通学状況(転校の可能性)

たとえば、母の自宅から小学校に通学していた子どもが、父が親権を取った場合、引っ越すことになり、転校せざるを得なくなる、といったケースが考えられます。子どもの環境が変化してしまうことが子どもの利益にならないと判断された場合、親権の決定に影響を及ぼす可能性もあります。

親族の協力の有無

子どもの監護に協力してくれる親族がいるかどうかも、親権の決定に影響します。離婚すると、親権者は子の監護と生計を立てるための仕事を両立させていくことになります。勤務中の子どものケアは保育園や託児所に預けることもできますが、親族がサポートできる方がより好ましいと判断されます。

親権者になるためにはどうすればいいのか?

前述のとおり、親権者を決める際にはこれまで長い時間をかけて築き上げた親子関係がものを言います。

いざ離婚手続きに突入してから急に「大切に思っている」「配偶者よりも強い愛情を持っている」と言葉で主張しても、これまでの子育て実績がないと親権を勝ち取ることは難しいかもしれません。

どうしても親権が欲しいのなら、配偶者が親権者として不適格であることを主張・立証しつつ、具体的な行動で示すことが大切です。

親権を取るために取るべき具体的行動の例

  • 浪費をやめる
  • 残業や夜の付き合いを減らす
  • 家事をする
  • 子どもと電話する、手紙を書く(別居の場合)

不貞をした親でも親権者になることができる?

不倫が原因で離婚した場合でも、有責配偶者(不倫した側の配偶者)が親権者として不利になる訳ではありません。
親権で重視されるのは、あくまでも「子どもの幸せ」。親権は、夫婦間の問題について相手にペナルティを与えるための手段ではないのです。

ただし、不倫相手に会いに行くために子どもをほったらかしにした、子どもに不倫相手を会わせたなど、“子どもに直接悪影響を及ぼす”場合には考慮されることがあります。

離婚調停の際の親権について、疑問や悩みがあれば弁護士に相談を!

いざ離婚を決意して親権を獲得できるか不安になったら、早めに弁護士に相談しましょう。

離婚手続きの中でも、とりわけ親権に関しては夫婦双方が感情的になりがちです。しかし冷静さを失った行動・言動をすれば、調停委員や裁判官からの心証が悪くなってしまうことになりかねません。

離婚案件の実績が豊富な弁護士に依頼すれば、親権について様々な角度からアドバイスをしてくれます。何をどんな風に伝えれば効果的なのか過去の事例を基に教えてくれるため、心強いでしょう。

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