別居期間の離婚調停への影響~離婚が認められる別居期間はどれくらい?

家を出ていく妻

別居期間は離婚調停に影響する!

愛し合った夫婦であっても、結婚生活に問題が生じたとき、「離婚準備のため」「冷却期間を置くため」などの理由で別居を選択する場合があります。

ではこの別居期間は、その後の離婚調停に影響するのでしょうか?

その答えはイエスです。結論から言えば、別居期間の長さによっては、離婚調停での離婚成立や条件に影響します。

本記事では、離婚調停に影響する別居期間について、

  • 別居期間が法定離婚事由として離婚調停で認められるケース
  • 離婚調停で離婚が認められる別居期間の長さ
  • 別居期間の生活費確保の方法
  • 財産分与の基準時は、原則としては別居期間の開始日

といった点に焦点をあてながら、詳しく説明します。

別居期間が法定離婚事由として認められるケース

夫婦関係が悪化し別居しているというと、一般の方の感覚では、「離婚調停・離婚裁判でも離婚が認められるのでは?」と思ってしまいがちです。

しかし、単純にそうとは言い切れません。

というのは、離婚調停・離婚裁判で離婚を認めてもらうためには、「法定離婚事由」と呼ばれる法律で定められた離婚理由が必要なところ、別居期間の存在それ自体は、法定離婚事由にあたらないからです。

ただし、別居期間の状況によっては、その別居が法定離婚事由の「悪意の遺棄」や「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして、離婚調停・離婚裁判で離婚が認められることがあります。

別居期間が「悪意の遺棄」にあたるケース

婚姻関係を結んでいる夫婦には、お互いに同居、協力、扶助する義務があります。義務を怠り、正当な理由なく同居を拒否し、扶養が必要な配偶者や子どもに生活費を渡さず別居が続いた場合には、法定離婚事由の「悪意の遺棄」にあたると判断され、離婚が認められる場合があります。

この場合、正当な理由とは仕事上必要な単身赴任や、病気回復のための転地療養などを指し、「悪意の遺棄」にあたるかどうかは、別居の経緯、別居の目的、別居期間、相手方配偶者の生活状況などから総合的に判断されます。

これまでの裁判例では、

浦和地裁 昭和60年11月29日判決

夫が、約30年間婚姻生活を続けた半身不随の身体障害者で日常生活もままならない妻を自宅に置き去りにし、正当な理由もないまま家を飛び出して長期間別居し、その間5年ほど妻に生活費を全く送金していなかったケース

などで、別居期間を「悪意の遺棄」にあたるとし、離婚を認めています。

別居期間が「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるケース

別居期間が長期に渡り、婚姻関係が破綻している場合には、法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたると判断され、離婚が認められる場合があります。

これまでの裁判例では、

東京地裁 平成17年5月13日判決

婚姻期間は約9年、別居期間約5年9ヶ月であり、夫婦ともに互いを思いやる姿勢に欠け、互いに相手に自己の要求を受けさせようとし、それがうまくいかないことで互いに不満をつのらせてきたケース

などで、別居期間を「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとし、離婚を認めています。

離婚調停で離婚が認められる別居期間はどのくらい?

一般的なケースでは5年以上

離婚調停において離婚が認められる別居期間は、一般的なケースでは5年以上が目安となります。5年未満の短期間の場合には、別居期間を理由とした離婚は認められにくく、逆に15年以上の長期間の場合には、別居期間を理由とした離婚が認められやすい傾向にあります。

ただし実際には、夫婦それぞれの年齢および同居期間と別居期間を対比して、「長期間」「短期間」を判断することとなりますので、個別の事案によって必要な別居期間は異なります。というのは、別居期間が仮に3年であっても、その前の同居期間が1年に満たない場合と30年の場合とでは、同居期間との対比における別居期間3年の重みが変わってくるからです。

家庭内別居は別居期間として認められない

なお家庭内別居は別居期間にカウントされないことがほとんどですので、この点につき注意が必要です。

有責配偶者から離婚請求するケースでは8年以上

有責配偶者とは、不倫や暴力などにより自らが離婚原因を作り、婚姻生活を破綻させた配偶者のことです。
実は有責配偶者からの離婚請求は、昭和62年の最高裁判決(最高裁 昭和62年9月2日判決)まで、裁判所は認めていませんでした。

最高裁 昭和62年9月2日判決

子供のいない夫婦が養子を取った後、夫と養子の母親との不倫関係が発覚し夫婦関係が破綻。夫は妻との別居後、養子の母親と同居、子供も生まれ、36年の別居期間を経て離婚調停~離婚訴訟に至った有責配偶者の訴えが認められたケース

しかし昭和62年の最高裁判決以降、下記の3つの基準を満たすことで、有責配偶者からの離婚請求を認めると判断するようになりました。

有責配偶者からの離婚請求を認める3つの基準

  1. 相当の長期間の別居(夫婦それぞれの年齢および同居期間との対比において判断)
  2. 未成熟の子が存在しない
  3. 相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状態におかれない

有責配偶者から離婚請求するケースで「相当の長期間の別居」と判断されるためには、一般的なケースの判断目安となる5年以上よりも厳しい、8年以上が目安となります。
というのは、これまでの最高裁判決で認められた別居期間として最短なのが、別居期間8年だからです(最高裁 平成2年11月8日判決)。

個別の事情により必要な別居期間が変わる

一般的なケースでは5年以上、有責配偶者からの離婚請求のケースでは8年以上が離婚調停で離婚が認められる別居期間の目安だと、既にお伝えしました。
しかし、これは裁判所が一律に定めた基準ではなく、個々の事案ごとに離婚に必要な別居期間は変わります。

そもそも離婚調停における別居期間は、離婚請求を認める・認めないの判断材料の一つでしかありません。
離婚調停で離婚を認めてもらうためには、結局のところ、別居期間以外にも様々な事情を考慮して総合的に判断してもらう必要があります。

ですから、離婚調停で離婚を認められるために必要な別居期間を知りたい場合は、弁護士などの専門家に、別居期間以外の個別の事情も伝え、総合的見地からアドバイスをもらうのが得策です。

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別居期間の生活費は婚姻費用分担請求で確保する

専業主婦(主夫)で経済力がない場合などでは、別居期間が長引くと生活費の確保に困る可能性があります。

それを防ぐためには、相手方配偶者に婚姻費用分担請求をしましょう。

婚姻費用とは

婚姻費用とは、居住費や生活費、子どもの養育費、婚姻生活を維持するためにかかる一切の費用のことを言います。夫婦には、お互いに協力し扶養する義務があるため、婚姻費用もお互いに分担する必要があります。

具体的には、夫婦のうち収入の多い方が収入の少ない方に、自分の生活と同レベルの生活が保持できるだけの金銭を支払う必要があります。

婚姻費用分担請求とは

婚姻費用分担請求とは、婚姻費用を別居中の相手方配偶者に請求する手続きで、裁判所を介さずお互いの協議で行うこともできますが、協議でまとまらない場合には、裁判所で調停・審判を起こして行います。

婚姻費用分担請求では、裁判所が、夫婦の資産、収入、支出など一切の事情について当事者から話を聞いたり、資料を提出させたりして話し合いを進めていきます。

婚姻費用がもらえるのは請求時から!なるべく早い請求を

婚姻費用は、請求時から離婚まで、あるいは再度同居するまでの間もらうことができます。別居により生活費に困った場合には、なるべく早く相手方配偶者に請求しましょう。手続きが難しい場合には、離婚問題に強い弁護士に相談するとスムーズな解決につながります。

別居期間のカウント方法

別居開始日を財産分与の基準時とするのが基本

別居期間ではその開始日が、離婚調停の財産分与に大きく関係してきます。

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を離婚時に分け合う制度ですが、財産はその時々で変動し内容が変わります。そこで問題となるのが、財産産分与の基準時は、一体いつの時点なのかという点です。

その答えは、「原則として別居期間の開始日」です。「原則として」というのは、裁判所は財産分与について、一律に基準時を定めていないからです。夫婦の協力状況は、その理由は、それぞれの夫婦よって協力態勢が異なり、一律にいつを基準時とするとは言えないと考えられているためです。

別居期間の開始日以降に取得した財産は、財産分与の対象外

財産分与では、原則として「別居期間の開始日」を財産の基準時としますので、「別居期間の開始日以降」に取得した財産は、財産分与の対象になりません。

ですから、相手方配偶者が別居後にもらった給与などについては、財産分与として受け取ることはできないのです。別居期間開始日と財産分与の基準時の関係については、勘違いのないようによく理解しておきましょう。

ただし、例外として、別居後も夫婦のどちらかが相手方配偶者の給与を管理し、別居後も経済面の変化がない場合などでは、財産形成における夫婦の協力が続いていると考えられ、財産分の基準時を別居期間の開始日とは別に判断することもあります。詳しく知りたい場合は、離婚問題に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

別居期間が長いと離婚調停で離婚を認められやすい

別居中の離婚調停への対応は弁護士に相談を

本記事をまとめると以下のとおりです。

  • 別居期間それ自体は、法的に認められる離婚理由(法定離婚事由)にならない
  • 長期間の別居は、法定離婚事由である「悪意の遺棄」「婚姻を継続続し難い重大な事由」にあたるケースも
  • 離婚調停で離婚が認められるのは、一般的なケースで5年以上、有責配偶者からの離婚請求するケースで8年以上が目安
  • 個別の事情により必要な別居期間は変わる
  • 家庭内別居は別居期間にカウントされないことがほとんど
  • 別居期間の生活費確保のためには婚姻費用分担請求を
  • 離婚調停における財産分与の基準時は、原則として別居期間の開始日

離婚問題に強い弁護士は、「別居期間の離婚調停への影響」に詳しい

別居期間の離婚調停への影響については、離婚問題に強い弁護士に相談しましょう。

離婚問題に強い弁護士は、「離婚調停に影響する別居期間の長さ」や「別居期間の生活費確保に役立つ婚姻費用分担請求」「別居期間の開始日と財産分与の基準時の関係」などに詳しく、一般の方にはわかりにくい別居期間の離婚調停への影響について、わかりやすく説明してくれます。

離婚・別居は人生の一大事です。一人で悩むよりも、弁護士という専門家の手を借りて、より納得できる解決を目指しましょう。

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