多額の借金を理由に離婚することはできる?返済の必要性などについて解説

離婚寸前の夫婦

夫や妻が借金をしていた、自分に内緒で配偶者が多額の負債を抱えていた。こんな時、あなたならどうしたいですか?

実は「借金問題」を理由に「離婚」ができます。

借金を理由に離婚をしても、配偶者が責任を負う必要は無く、相手の負債を配偶者が庇う必要は無いからです。また離婚をすることで、みなさんやお子さんの生活を守ることもできます。

とは言え、配偶者が勝手にクレジットカードを使い込んでいた場合や、カードローンを二次利用していた場合には「責任を問われる」こともあるので注意が必要です。

本記事では『借金を理由に離婚をする方法』について、詳しく解説しましょう。

借金を理由に離婚を考えるのは正しい選択

借用書とペン

夫や妻が借金を抱えていた、しかも負債の額は数百〜数千万円超えで、とても返せる額では無い…。

このような現実を目の当たりにしても、なお「配偶者の借金を肩代わりしよう」と考える必要はありません。例えば、配偶者がギャンブルや所得に見合わない借金をした場合、配偶者ではなく借りた本人が「返済の義務を負う」のが原則です。

また、協議離婚で話し合いを行い、相手が納得しない場合は調停離婚、離婚裁判という手段もあるので、離婚が成立するよう手続きを進めれば、金銭感覚の合わない相手と婚姻関係を継続する必要はありません。

法律の解釈としては、婚姻中に配偶者が作ってしまった多額の借金は「特有財産」となりもう一方の配偶者に返済の義務は生じません。

特有財産(とくゆうざいさん)は、民法において夫婦の一方が婚姻前から有する財産や婚姻の間、自己名義で得た財産(マイナスの財産も含む)を意味します。夫婦財産制のうち「法定財産制」によって規定され、特有財産は夫婦共有財産から外されます。

民法第762条

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

このため「負の財産も夫婦のものだから、一緒に返済してくれ!」という理屈は通りません。

ただし、配偶者が作った債務について例外があります。例えば、どちらか一方が勝手に作った借金だったとしても、お互いの生活費に充当された負債については「日常家事債務」として、借入をしなかった配偶者に返済義務が生じる恐れがあります。

日常家事債務(にちじょうかじさいむ)は、その名の通り、日常の家事に関する債務を指します。民法では夫婦の一方が家事に関する第三者との法的行為(この場合は、ローン契約など)について、生じた債務は他の一方にも連帯責任があるとしています。

民法第761条

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

このため、住宅ローンや自動車ローン、トラベルローン、家電の割賦契約なども、どちらかが一方的に作った債務だとしても、夫婦それぞれに返済義務が生じるのです。

夫や妻を愛しているのなら、借金問題を夫婦で乗り越えるという選択肢もアリ

みなさんの中には、お互いを信頼する気持ちから「債務問題を友に乗り越えたい」という夫婦もいらっしゃるでしょう。もちろん、夫婦二人で借金の問題を解決したいという方、借金問題を乗り越えて婚姻関係を継続させたいという方については、借金をバネに絆を深めることができるはずです。

これからも婚姻関係を続けられる方は、ひとまず「借金問題の解決」に焦点を当てて、債務整理や過払い金返還請求など、債務の負担を軽くする方法(または債務を無くす方向)で弁護士に相談しましょう。

夫や妻の借金は家族にも悪影響あり!

配偶者が借金を抱えている場合、債務の度合いがあまりにも大きければ「他人事」ではなく私たち自身にも悪い影響があります。

例えば、夫(または妻)がカードローンやクレジットカードの返済を長期間「延滞」していたとします。この場合、家族である私たちが新たにクレジットカードやカードローンを申し込んでも、審査に通らなくなるのです。

これは、家族の信用情報(=クレジットヒストリー)が「ネガティブ」になっていることが原因で、家族の信用情報が悪ければ、家族の信用状況もネガティブだと判断されるからです。

信用情報とは?

信用情報とは、クレジットやローンなどの信用取引に関する契約内容や返済・支払状況・利用残高などの客観的取引事実を表す情報です。

信用情報には、クレジットやローンなどを利用した際の契約内容や返済・支払状況(期日通りに返済・支払したかなどの利用実績)、利用残高などに関する情報が記録されており、新たにクレジットやローンなどの利用を希望する際にクレジット会社やローン会社などが皆さまの「信用力」を判断するための参考情報として確認しています。

参考サイト:JICC(指定信用情報機関 株式会社日本信用情報機関)

クレジットカードやカードローンだけでなく、後払いサービスや割賦契約を利用したいと思っても「審査が通らない」場合は、配偶者や家族の中に、支払いをしていない人がいないか確認しましょう。

各クレジットカード、カードローン会社のサイトや契約書を確認すると、加盟している信用情報機関が分かり、個人の信用情報について「開示請求」が行えます。

ここで、国内の代表的な信用情報機関について、連絡先とサイトのURLを紹介しておきます。

国内の代表的な信用情報機関

CIC(指定信用情報機関) クレジットカード会社と信販会社が加盟する信用情報機関。延滞情報は最長5年、債務整理は最長5年、多重申込は最長6ヶ月間記録が保管される。
https://www.cic.co.jp
JICC(日本信用情報機構) 消費者金融と信販会社が加盟する信用情報機関。延滞情報は最長5年、債務整理は最長5年、多重申込は最長6ヶ月間記録が保管される。
https://www.jicc.co.jp
JBA(全国銀行個人信用情報センター) 銀行と銀行系カード会社等が加盟する信用情報機関。延滞情報は最長5年、債務整理は最長5年(官報情報は10年)多重申込は最長6ヶ月間記録が保管される。
https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/

開示請求は郵送、窓口、ネットからの請求が行えます。各信用情報機関のサイトにて、手数料や開示の方法をチェックしてみてください。なお債務の種類は、カードローンやクレジットカードだけに留まりません。

例えば、日本学生支援機構の奨学金を利用し、返済ができていない人(遅延の状態が続いている)人については、債権回収会社に情報が渡っており、信用情報機関のデータは「ネガティブ」となっています。クレジットカードやローンを申し込んでも、審査で否決されてしまうという方は、信用情報をチェックされることをおすすめします。

信用情報がネガティブなままでは、住宅ローンやマイカーローン、お子さんの教育ローンも組めません。またクレジットカードが使えなくなるので、公共料金の支払いやお買い物の際、不便を強いられることになります。

配偶者のクレジットカード二次使用は夫婦の連帯責任になる!

ここまで、配偶者のつくった債務(日常家事債務以外)については、特有財産として「返済義務はない」と説明をしましたが、配偶者があなたのクレジットカードを無断で使用した場合の債務については例外となります。

実は、クレジットカードやカードローンの契約内容には、家族がカードを不正に利用した場合の債務は、契約者に返済の義務があると書かれてます。このため、家族が勝手に作った借金であっても、自分のクレジットカードやローンカードが悪用された分については、家族であるあなたに債務の責任が生じます。

家族以外の第三者が、勝手にカードを悪用した場合には「錯誤」や「詐欺」などの理由で、相手を罪に問うことができます。

錯誤と詐欺の意味

錯誤(さくご) 誤りや間違い、事実とは観念が一致しないこと。
詐欺(さぎ) 他人を騙して、金品を奪ったり損害を与えること。

しかし、家族や配偶者の場合は刑法第257条「親族等の間の犯罪に関する特例」によって、錯誤や詐欺の罪が免除されてしまうので「家族が罪に問われる」というのは現実的ではありません。

とはいえ、家族が無断で契約をした場合は「無権代理行為」を主張し、配偶者に支払いの義務が無いことを通すこともできます。無権代理行為とは「代理権が無いにも関わらず、無断で代理行為を行うことや代理権限を越えて代理行為を行うこと」を意味します。

家族とはいえ、勝手に債務を負わされた場合は、あなた自身が債務の事実を追認するか追認拒絶するか問うことができる「催告権」を行使し、契約を無効とすることが可能です。この場合は、カード会社やローン会社との交渉になるので、自力で立ち向かうのではなく、債務問題の解決に強い弁護士を立てて「交渉の依頼」をしましょう。

税金の滞納は家族の財産差し押さえという悲劇につながる

給与明細と現金

配偶者が所得税、住民税、そのほか税金を長期間滞納していた場合、家族にも督促状が届き、支払いが行われないままでは、配偶者とあなたの財産が指し押されることになります。

税金の滞納でお困りの方は、至急該当する窓口(例:市民税の場合は自治体、所得税の場合は国税庁など)に連絡を取り、税金の滞納を解消する方法について相談しましょう。市民税や地方税の場合は、分割で支払う方法や据え置き期間(免除期間)を設けてもらうなど相談の余地があります。

また所得税の未払いを含む「財産差し押さえ」の問題でお困りの方は、至急信頼できる弁護士さんに「お金のトラブル」について相談をしてみてください。緊急性の高い問題については、自己解決するのではなく、弁護士にアドバイスを請うのが一番確実な方法です。

借金問題で離婚すべきかどうか判定してみよう

借金問題で「離婚すべきか」どうか判定するため、チェックツールを作ってみました。借金問題でお困りの方は、下の質問に答えてみてください。そして、YESの数が合計何個あるのかチェックしてみましょう。

お金が原因で離婚するか「危険度」チェック表

Q01. 相手の収入がいくらなのか教えてもらえない YES □ NO □
Q02. 夫(または妻)が借金をしているようだ YES □ NO □
Q03. 夫(または妻)趣味はギャンブル(競馬・パチンコ等)だ YES □ NO □
Q04. 生活費や子どもの養育費をもらっていない YES □ NO □
Q05. 夫(または妻)は趣味にお金をかけている YES □ NO □
Q06. 夫(または妻)の金銭感覚は派手だと感じる YES □ NO □
Q07. 夫(または妻)は、SNSなどで自慢をする機会が多い YES □ NO □
Q08. カード会社から督促のハガキが届いていた YES □ NO □
Q09. 電話などで、借金の取り立てがあった YES □ NO □
Q10. 夫が税金や公共料金の支払いを滞納している YES □ NO □
YESの数 計______個

いかがでしたか。以下に判定の基準を設けたので、離婚すべきかどうか確認してみましょう。

お金が原因で離婚するか「危険度」を判定

回答結果 問題の解決方法 離婚の危険度
YESの数が0〜1個 夫婦の金銭感覚が合っていない様です。離婚の理由にならないよう、お金の問題は夫婦で話し合うようにしましょう。 離婚の必要なし
YESの数が2〜4個 既に借入が膨らんでいる場合は、借金問題が解決できるよう夫婦で話し合いをしましょう。 要検討
YESの数が5〜7個 この先、配偶者の借金で苦しむ可能性あり。問題は早期解決できるよう、債務問題に強い弁護士に相談しましょう(離婚について弁護士に相談可) 離婚の可能性あり
YESの数が8〜10個 今すぐ離婚をするか、婚姻関係を継続する場合は、債務整理などで借金問題を可決しましょう(離婚について弁護士に相談可) 離婚の可能性

YESの数が多い方は、夫(または妻)との「離婚を検討すべき」です。

もちろん、連帯責任として債務を返すのであれば話は別ですが、配偶者の身勝手な行為で多額の借金を負わされる方、借金苦で婚姻関係を解消したいという方は、上の判定結果を参考に「離婚について」検討されることをおすすめします。

借金の原因がパチンコやギャンブルだった場合のトラブル解決法

ギャンブル依存症の夫

借金の原因が、パチンコやギャンブルだった場合には、本記事の冒頭で説明した「特有財産」に相当するため、あなたに債務の責任は問われません。

しかし、愛している配偶者に「多額の借金があった」という事実は、家族にとって辛いできごとです。パチンコ等のギャンブル依存は、長年「社会的問題」となっており、2018年の時点では国内の約320万人がギャンブル依存に陥ってるとのこと。

つまり、成人の約3.2%が「ギャンブル依存症」が疑われるというのですから、パチンコやパチスロにのめり込む人は、あなたの近く(家族の中に)にいてもおかしくないのです。配偶者の借金が原因で「離婚をしたい」という方は、婚姻を継続しがたい理由として、離婚手続をしましょう。

夫婦関係が破綻し、関係修復が困難な場合、民法770条1項1〜4号に該当しない方において「婚姻を継続しがたい理由」として、「離婚原因」とすることが認められています。

婚姻を継続しがたい理由とは?

婚姻を継続しがたい理由には、以下のような項目があります。

  • 性格の不一致
  • 愛情の喪失
  • 暴力、虐待、侮辱
  • 浪費、金銭感覚の不一致
  • 配偶者の一方が働かない
  • 同居、協力扶助義務の違反(生活費を入れない)
  • 長期間に渡る別居
  • 親族との不和・不仲
  • 性生活の不一致
  • 配偶者の逮捕や受刑
  • 病気、身体的な障害
  • 宗教の違い

上の項目については、夫婦関係が破綻し婚姻を継続しがたい場合には、離婚原因として認められています。

また、上の条件に該当しないが「夫婦において婚姻を継続しがたい理由がある」という方は、離婚弁護士に相談し「離婚できるかどうか」意見を仰いでください。

離婚で配偶者と契約をした債務はどうなる?

離婚をした後「配偶者の債務責任は解消されるのか?」という疑問ですが、夫婦が連帯保証人として契約したローンや借入については、離婚後も債務の責任を負う必要があります。

例えば「住宅ローン」を組む際、夫婦の名義で契約をした方は、離婚後もそれぞれに返済義務が残ります。なぜなら、銀行や金融機関は夫と妻、それぞれを債務者とし契約を結んでいるからです。

このため「離婚をしたらローンの連帯保証人から逃れられる」といった考えは通用しません。しかし「例外」があります。ローンの一部を一括返済し、新たな保証人を探してきた場合には、夫と契約したローンの保証人から抜けられるよう、銀行や金融機関に交渉することができるからです。

もちろん、(上の条件を満たしても)金融機関によっては「NO」と言われる可能性は高いです。それでもなお、婚姻中の債務契約(=連帯保証人)を解消する方法については、弁護士に相談の上、有効とされる方法を提示してもらいましょう。

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借金を理由に離婚請求する方法

配偶者の借金を理由に「離婚請求」する場合には、協議離婚を行い、話し合いがまとまらない場合は調停離婚で「離婚の成立」を目指します。

それでも、夫婦のいずれかが「離婚したくない」と考える場合には、離婚裁判によって離婚が成立するよう争うことになります。

離婚裁判については、法律上認められる「離婚の理由」が必要とされます。具体的には【不貞・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復しがたい強度の精神病・婚姻を継続しがたい理由】があれば、離婚の理由として認められるのです。

法律的に「離婚の理由」として認められること

① 不貞 夫が配偶者以外の女性(妻の場合は男性)と不倫や浮気など、肉体関係のある不貞行為を行った場合
② 悪意の遺棄 夫婦の義務である同居義務、協力義務、扶養義務に対して違反をした場合
③ 3年以上の生死不明 配偶者の生死が3年以上不明な場合
④ 回復しがたい強度の精神病 配偶者が回復の見込みがない、強度の精神病を患っている
⑤ 婚姻を継続しがたい理由 上の条件以外に婚姻を継続しがたい理由がある場合

①〜⑤の理由について、さらに詳しく解説を進めます。

① 不貞

夫や妻の借金が原因で離婚を考えている場合、相手に不貞の事実があり、配偶者と浮気相手の不貞行為が証明できるのであれば、①の「配偶者の不貞」を理由に離婚を申し立てると(離婚理由として)認められる可能性は高くなります。

なぜなら借金を理由に離婚をするよりも、夫婦関係が破綻していると解釈されやすいからです(※ ただし、風俗などの肉体関係については例外とされる)。

② 悪意の遺棄

夫や妻がギャンブルにのめり込んでいたり、借金をして生活費を渡さない、家を出て行ったきり帰ってこないなど、家庭生活を顧みない場合には「悪意の遺棄」が認められ、離婚が成立する可能性は高くなります。

また夫婦が別居した後も、婚姻費用が渡されていない、借金を理由に苦しい生活を強いられているというような場合にも、悪意の遺棄が認められ「離婚の理由」として認められます。

③ 3年以上の生死不明

夫や妻の生死が3年以上不明な場合も、婚姻関係が破綻していると考えられるため、法的に「離婚理由」が認められます。

④ 回復しがたい強度の精神病

借金癖程度では「回復しがたい強度の精神病」とは判断されないでしょう。

また軽度のパチンコ依存やギャンブル依存は、この項目に該当しませんが、多額の債務をしてまでギャンブルにのめり込んでいるような場合や、回復の難しい精神病を患っている配偶者については「離婚理由」が認められます。

⑤ 婚姻を継続しがたい理由

⑤の「婚姻を継続しがたい理由」については、既に説明をしたので詳細を省きますが、本項①〜④の理由には該当しないが、婚姻関係を継続しがたい特別な理由がある場合には、「離婚理由」として認められる可能性があります。

※ 離婚理由となるかどうかは、離婚弁護士に確認されると安心です。

まとめ|相手が借金を繰り返す場合は離婚を検討しよう

ここまで紹介した方法以外にも「借金を理由に離婚」請求する場合には、離婚弁護士への相談をおすすめします。

例えば、婚姻を継続しがたい理由として「該当するのかどうか」線引きが曖昧な事案についても、離婚弁護士であれば的確に問題解決の方法を「法律の解釈」をもとに提示してくれます。

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