録音は離婚の証拠になる?相手に無断での録音はNG?

離婚協議の録音

離婚の際、離婚事由や慰謝料の証拠が必要になることがあります。メッセージの履歴や写真、書類、録音データなどが一般的です。
ところで、相手に無断で録音した音声は、法的に問題がないのでしょうか?
今回は、離婚手続きにおける録音データの有効性や注意点について解説します。

離婚話の録音が暴力・モラハラなどの証拠になる場合も

離婚の話し合いをする夫婦

不倫・DVなどの離婚原因を証明するものが必要

配偶者が離婚に同意している場合は、お互いに離婚届に記入すれば離婚が可能です。一方相手が離婚を拒否している場合には、不倫・DVなどの法定離婚事由(民法第770条)があることを客観的に証明するための物的証拠が必要となります。

夫婦間の会話・やりとりの様子を収録した録音データは、こうした証拠のひとつとして使用することができます。
証拠としては、録音データのほか、メッセージの履歴、写真、日記、医師の診断書、領収書などが提出されています。

本来は相手の同意を取って録音するのが望ましい

ここで問題となるのが、相手に無断で録音したデータも有効なのかということです。

相手の同意をきちんと得てから録音するのが本当は望ましいのですが、過去の裁判例によると、無断で録音した場合であっても「人格権を著しく反社会的な手段方法で侵害したとまではいえない」と判断しています。

とくに離婚の場合は相手と揉めているケースが少なくないため、証拠収集の同意を得ることが困難であると考えられます。

そのため、以下で紹介する最低限のルールさえ守っていれば、やむを得ず無断で録音したデータも問題なく証拠として認められることがほとんどです。

相手に黙って無断で録音するのはNG?

「反社会的な手段による録音」でなければ、証拠として認められるのが通常

前述の通り、不倫やDVなどで配偶者と揉めて離婚する場合には、録音に相手の同意が得られないことが多いでしょう。

そのような状況を考慮して、裁判例では「著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたもの」でなければ問題ないとしており、無断での録音はこれに該当しないとしています(東京高裁昭和52年7月15日判決)。

反社会的な手段とは、例えば相手を暴行・脅迫して無理やり自白させるとか、他人の自宅に忍び込んで盗聴するなどの行為が挙げられます。

録音した音声が証拠として認められないケース

妻を脅す夫

第三者が無断で盗聴した録音

第三者が無断で盗聴した録音データについては、プライバシー権侵害となり、違法性の度合いが強いため証拠として認められない可能性が高いと考えられます。

離婚に向けて進んではいるものの法律上はまだ夫婦関係にある場合も、注意が必要です。

離婚を前提として別居している夫婦が、相手の住んでいるアパートを盗聴すると、不法行為として損害賠償を請求されるおそれがあります。

また、夫婦の片方がひとりで自宅にいる際に、生活音や会話を無断で録音する行為についても、違法行為であると判断したケースがあります(東京地裁平成25年9月10日)。

暴力や脅し等で無理矢理発言させた場合

身体的暴力や言葉による脅しによって無理やり発言させた上で録音した場合も、証拠が認められない可能性が高いでしょう。

この場合は、前述の「著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集されたもの」に該当すると考えられます。

もしもこのような証拠を認めてしまうと、暴力や脅迫が横行し、無実の罪や不法行為について責任を負わされる人が続出するでしょう。そのため、法律でも禁止されています。

離婚の話し合いを録音する場合のポイント

SNSはNG

証拠になるのは相手との一対一でのやりとり

前述の通り、自分がいない場所を録音(盗聴)することは許されませんが、一対一で話し合いをしている際に、自分と相手の発言を録音する行為は許されています。

一対一の場合であっても、相手に威圧的な態度を取ったりモノを叩いたり蹴ったりするなど暴力的な行動・言動は避けるようにしましょう。
相手をわざと挑発して怒らせたりして発言を引き出すと、録音データの信憑性が疑われることになりかねません。

録音した音声をインターネットやSNSにはアップしない

不倫やDVなどの音声データを取得しても、相手に無断でインターネット上に公開しないようにしましょう。

とくに不倫については、報復と社会的制裁のためにインターネット上に“晒す”ことを考える人も少なくありません。

しかしたとえ事実であっても、不倫を第三者に暴露する行為は名誉毀損罪やプライバシー権の侵害に該当し、民事責任と刑事責任を負うことになりかねません。

相手に無断でのインターネットへの”晒し”は名誉毀損罪・プライバシー権侵害を問われる恐れ

名誉毀損罪について、第230条第1項には「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。

インターネットなど公の場で不倫の事実を晒した場合には、名誉毀損の罪に問われ、さらに民事上の不法行為責任(損害賠償)も負わされるリスクがあるということです。

裏切られて悔しく思う気持ちは当然ですが、慰謝料請求などの適法な手段により制裁を下すようにしましょう。

まとめ

不倫・DV・モラハラなどの証拠として、録音データを提出することがあります。同意を得ずに録音データを収集したとしても、ほとんどの場合問題なく証拠として採用されます。

しかし相手の自宅や職場に忍び込んで盗聴する行為は違法と判断され、証拠としても認められない可能性が高いでしょう。

相手に無断で録音する際は、必ず自分と相手の一対一の会話を録音するようにしましょう。

その他、離婚の証拠収集についてご疑問やお悩みがある方は、早めに弁護士に相談しましょう。

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